オン抵抗(RDS(on))とは、MOSFETがオン状態にあるときのドレイン・ソース間の抵抗値です。パワーデバイスではこの抵抗による導通損失(I²×RDS(on))が発熱と効率低下に直結するため、耐圧と並んで最重要のカタログ値になります。
オン抵抗はいくつかの成分の直列和です。チャネル抵抗、JFET領域の抵抗、ドリフト層の抵抗、基板抵抗、そして配線とパッケージの寄生抵抗です。高耐圧デバイスではドリフト層が厚く低濃度になるため、この成分が全体の大半を占めます。逆に低耐圧品ではチャネルとパッケージの寄与が相対的に大きくなります。
材料の性能限界は「オン抵抗と耐圧のトレードオフ」として表され、Siリミット・SiCリミットといった理論曲線で議論されます。SiCはこの曲線自体がSiより2桁ほど有利な位置にあり、同じ耐圧ならオン抵抗を大幅に下げられます。スーパージャンクション構造は、Siのままこの理論限界を超えるために考案された構造です。
実用上は、面積との兼ね合いで決まる点に注意が必要です。チップ面積を増やせばオン抵抗は下がりますがコストと寄生容量が増えます。そのため設計では、オン抵抗そのものではなく「オン抵抗×チップ面積」(RonA、単位はmΩ·cm²)という指標で材料と構造の優劣を比べます。