最終更新 2026-10-19

ワイドバンドギャップ半導体とは

Wide Bandgap Semiconductor

ワイドバンドギャップ半導体とは、シリコン(約1.1eV)より広いバンドギャップを持つ半導体材料の総称で、SiC(約3.26eV)とGaN(約3.4eV)が代表です。バンドギャップが広いと絶縁破壊電界が高くなるため、同じ耐圧をより薄く高濃度のドリフト層で実現でき、オン抵抗を大幅に下げられます。高温動作と高速スイッチングにも有利で、EV・急速充電器・データセンター電源でシリコンの置き換えが進んでいます。

目次8項目
  1. 定義・解説
  2. 図解
  3. 紛らわしい言葉の切り分け
  4. よくある質問
  5. 設備の製造メーカー
  6. 関連する製品
  7. 関連用語
  8. 比較・違いを学ぶ

定義・解説

ワイドバンドギャップ半導体(WBG)とは、シリコン(Si、約1.1eV)よりも大きなバンドギャップを持つ半導体材料の総称です。代表格はSiC(炭化ケイ素、約3.26eV)とGaN(窒化ガリウム、約3.4eV)で、さらに広い酸化ガリウム(Ga₂O₃、約4.8eV)やダイヤモンド(約5.5eV)も次世代材料として研究されています。

バンドギャップが広いことの直接の帰結は、絶縁破壊電界強度が高くなることです。SiCの絶縁破壊電界はSiのおよそ10倍あり、同じ耐圧を確保するのに必要なドリフト層をずっと薄く、かつ高濃度にできます。ドリフト層はオン抵抗の主要因なので、結果として同じ耐圧でオン抵抗を大幅に下げられます。これがWBGデバイスが「低損失」と言われる根拠です。

第二の帰結は高温動作です。バンドギャップが広いと熱によるキャリアの励起が起こりにくく、真性キャリア濃度が低く保たれます。SiCデバイスは200℃を超える環境でも動作でき、冷却機構を小型化できるため、システム全体の体積と重量を削減できます。

第三に、高速スイッチングが可能になります。ドリフト層が薄く蓄積キャリアが少ないため、ターンオフ時のテール電流が小さく、スイッチング損失を抑えたまま周波数を上げられます。周波数が上がるとトランス・インダクタ・コンデンサといった受動部品を小型化できるため、電源全体の電力密度が向上します。GaNの急速充電器が小さいのはこの効果によるものです。

一方で課題も明確です。SiCは結晶欠陥の制御が難しくウェハが高価で、長く150mm口径が中心でした。GaNはSi基板上に成長させるGaN-on-Siが主流でコストは下げやすいものの、縦型構造が作りにくく高耐圧化に制約があります。用途ごとの適材適所が当面続く見通しです。

図解

半導体材料のバンドギャップの比較(Ge・Si・GaAs・SiC・GaN)とワイドバンドギャップの位置
シリコン(約1.1eV)より広い材料をワイドバンドギャップ半導体と呼ぶ。

紛らわしい言葉の切り分け

SiCとGaN。違いは得意な電圧と周波数の範囲です。SiCは高耐圧と高温に強く、EVの主駆動インバーターに使われます。GaNは650V以下の領域でオン抵抗が低く高速にスイッチングできるため、急速充電器や通信、データセンターの電源に向きます。 比較記事 →

酸化ガリウムとSiC。違いはバンドギャップと基板の作りやすさです。酸化ガリウムは約4.8〜4.9eVとSiC(約3.3eV)より大きく、溶かした原料から基板を作れるため安くできる可能性があります。SiCは熱をよく逃がし、p型も作れてMOSFETが量産済みです。酸化ガリウムは放熱とp型が課題です。 比較記事 →

関連するデータ・ツール

データ半導体材料の物性一覧計算・換算ツールeV↔波長 換算ツール(バンドギャップ・露光波長)計算・換算ツール真性キャリア濃度・フェルミ準位計算ツール計算・換算ツール耐圧とオン抵抗の理論限界(ユニポーラ限界)計算ツール

この用語を扱う職種

設計・デバイス開発パワーデバイス開発エンジニア設計・デバイス開発化合物半導体エンジニア

よくある質問(FAQ)

ワイドバンドギャップ半導体にはどんな材料がありますか?
実用化が進んでいるのはSiC(炭化ケイ素、約3.26eV)とGaN(窒化ガリウム、約3.4eV)の2つです。さらに広いバンドギャップを持つ酸化ガリウム(Ga₂O₃、約4.8eV)やダイヤモンド(約5.5eV)も研究段階にあり、超高耐圧用途での実用化が期待されています。
なぜバンドギャップが広いと低損失になるのですか?
バンドギャップが広いと絶縁破壊電界強度が高くなるためです。SiCの絶縁破壊電界はSiの約10倍あるので、同じ耐圧を確保するのに必要なドリフト層を1/10程度の厚さにでき、しかも不純物濃度を高くできます。ドリフト層はオン抵抗の主要因なので、これが導通損失の大幅な低減につながります。
ワイドバンドギャップ半導体の課題は何ですか?
コストです。SiCは融液からの結晶引き上げができず昇華法で成長させるためウェハが高価で、口径も200mmへの移行途上にあります。GaNはSi基板上に成長させてコストを下げられる一方、縦型構造を作りにくく高耐圧化に制約があります。当面は用途ごとの適材適所が続く見通しです。

設備の製造メーカー

この用語に関連する製品

型番は各社の公式製品ページで確認したものです。出典のリンクは各製品ページに載せています。

B1505A パワーデバイスアナライザ/カーブトレーサKeysight Technologies・パワーデバイステスター
PD1500A ダイナミックパワーデバイスアナライザKeysight Technologies・パワーデバイステスター

関連する装置カテゴリ

同じトピックの用語

化合物基板(SiC・GaN・サファイア) のトピックで関連する用語です。

同じトピックの企業

コヒレント(Coherent Corp.)米国レゾナック(旧昭和電工)日本住友電気工業(SiC・化合物半導体)日本SK Siltron韓国AIXTRONドイツVeeco Instruments米国

比較・違いを学ぶ