SiC MOSFET(Silicon Carbide Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)は、シリコン(Si)の代わりに炭化ケイ素(SiC)を半導体材料として用いたパワーMOSFETです。SiCはSiと比べてバンドギャップが3倍(3.26eV)・絶縁破壊電界が10倍・熱伝導率が3倍大きく、高電圧(600V〜10kV)・高温(200°C超)・高周波動作が可能です。電気自動車(EV)のインバーター・オンボードチャージャー(OBC)・DC-DCコンバーター向けに急成長しており、Tesla Model 3への採用(2018年)が市場普及の転換点となりました。
SiC MOSFETの主な特性はオン抵抗(RDS(on))が低く、スイッチング損失が小さいことです。同一電圧定格のSi IGBTと比べてオン抵抗を約1/300に低減でき、スイッチング周波数を高くできることでフィルタ部品(コイル・コンデンサ)を小型化できます。EVのインバーターにSiC MOSFETを採用することで、システム効率が約1〜3%向上し、走行距離の延長・バッテリー容量削減・装置の軽量化が実現されます。STMicroelectronics・Wolfspeed・Onsemi・インフィニオン・ロームが主要サプライヤーです。
SiC MOSFETの製造は従来のSi半導体とは異なる専用プロセスが必要です。SiCウェハ(現在主流は150mm、200mm移行中)へのイオン注入(高温・高エネルギー)・ゲート酸化膜形成(SiO2/SiC界面品質が性能の鍵)・高温アニール(1500°C超)などの工程が特有です。SiCエピタキシャル層の成長にはMOCVD装置が使われます。GaNパワーデバイスとの比較はsic-vs-ganの比較記事を、SiC材料の基礎はsilicon-carbideを参照してください。