スイッチング損失とは、パワーデバイスがオンとオフを切り替える過渡期間に発生する電力損失です。切り替えの瞬間は電圧と電流が同時にゼロでない状態を通過するため、その積が損失として熱になります。ターンオン損失(Eon)とターンオフ損失(Eoff)に分けて評価されます。
導通損失が電流の2乗に比例するのに対し、スイッチング損失はスイッチング周波数に比例して増えます。したがって低周波なら導通損失が、高周波ならスイッチング損失が支配的になり、この2つの和が最小になる周波数が最適動作点になります。
IGBTでは、ターンオフ時に蓄積された少数キャリアが掃き出されるまで電流が流れ続ける「テール電流」がスイッチング損失の大きな要因です。多数キャリアデバイスであるSiC MOSFETにはこのテール電流がないため、Eoffを大幅に下げられます。SiCが100kHz以上の高周波動作を可能にする理由がここにあります。
スイッチング損失はデバイス単体では決まらず、ゲート駆動条件と回路の寄生インダクタンスに強く依存します。ゲート抵抗を下げれば高速化して損失は減りますが、dv/dtとdi/dtが増えてサージ電圧やノイズ(EMI)が悪化します。この折り合いをつけるのがゲートドライバ設計の要点です。