パワーエレクトロニクスとは、半導体スイッチを用いて電力の形態(直流と交流、電圧、周波数)を高効率に変換・制御する技術分野です。信号を扱う一般の電子回路が「情報」を対象にするのに対し、パワーエレクトロニクスは「エネルギー」そのものを対象にします。
基本となる変換は4種類です。交流から直流への整流(AC-DC)、直流の電圧を変える昇降圧(DC-DC)、直流から交流への逆変換(DC-AC、インバーター)、そして交流の周波数変換(AC-AC)です。これらを組み合わせて、EVの駆動系、太陽光発電のパワコン、データセンターの電源、家電のモーター制御などが構成されます。
変換効率がこの分野の中心的な指標です。損失はすべて熱になるため、効率が1%改善するだけで冷却機構を小さくでき、システムの体積・重量・コストが下がります。半導体材料をSiからSiCやGaNへ置き換える動機も、突き詰めればこの効率改善にあります。
近年の潮流は高周波化です。スイッチング周波数を上げるとトランスやインダクタを小型化できるため電力密度が上がりますが、スイッチング損失とノイズが増えます。ワイドバンドギャップ半導体は、この高周波化の制約を緩めることでパワーエレクトロニクス全体の設計自由度を広げています。