EVインバーター(主駆動インバーター)とは、電気自動車のバッテリーが供給する直流を三相交流に変換し、駆動モーターの回転数とトルクを制御する装置です。EVのパワートレインにおいて、消費電力と効率を最も大きく左右するコンポーネントの一つです。
構成は、6個のパワースイッチ(IGBTまたはSiC MOSFET)をブリッジに組んだパワーモジュール、それを駆動するゲートドライバ、平滑用のDCリンクコンデンサ、電流・位置センサ、そしてモーター制御を行うマイコンです。扱う電力は数十kW〜数百kWに達し、電流は数百アンペア規模になります。
近年の最大の変化は、Si IGBTからSiC MOSFETへの置き換えです。SiCはスイッチング損失が小さく高周波動作ができるため、インバーター効率が数%改善し、これが航続距離の延長に直結します。Tesla Model 3が主駆動にSiCを採用したことが転換点となり、その後各社が追随しました。
システム電圧の800V化もSiCを後押ししています。800V系では充電時間を短縮できる一方、デバイスには1200V級の耐圧が要求されます。この電圧帯はSiCが最も有利な領域であり、急速充電性能と効率の双方からSiC採用が進む構図になっています。