半導体サイクル(Semiconductor Cycle)とは、半導体産業における需要と供給のアンバランスによって周期的に発生する景気の拡大期(ブーム)と収縮期(ダウンターン)の波動現象を指す。「シリコンサイクル」とも呼ばれ、過去の歴史では概ね3〜4年周期でアップサイクルとダウンサイクルが繰り返してきた。サイクルの振幅と長さはキャパシティ投資の大型化と技術転換期によって変動し、業界全体の設備投資(CAPEX)戦略に大きな影響を与える。
半導体サイクルの発生メカニズムとして、①需要の急増期に供給不足が発生→②各社が過剰投資を行い新規ファブを稼働→③供給過多となり価格が急落→④在庫調整・設備投資抑制のダウンターン→⑤需要回復で再びブーム、というブルウィップ効果(Bullwhip Effect)が根本にある。製品リードタイムが長く(ファブ建設に2〜3年)、在庫調整に時間がかかる産業特性がサイクルを増幅させる。
近年のサイクルの特徴として、①AIサーバー向けHBM・先端ロジックがサイクルから切り離されて高成長を維持する一方、②スマートフォン・PC向けコモディティDRAM・NANDがサイクルの影響を強く受ける「二極化」が進んでいる。2022〜2023年のダウンターンではNAND価格が60〜70%下落し、SK Hynix・Samsung・Micronが大幅な生産調整を実施した。
半導体装置業界はサイクルの影響を1〜2クォーター遅れて受ける。ウェーハファブ装置(WFE:Wafer Fab Equipment)市場は2021年に年間1,000億ドル超に達した後、2023年に700億ドル台まで縮小し、2024年以降は再び成長軌道に入っている。Applied Materials・Lam Research・TEL・KLAは各サイクルでの受注残(バックログ)管理と工場稼働率調整が経営の核心課題となる。
投資家・アナリストはBook-to-Bill比(受注額÷売上高)、DRAM/NANDのスポット価格、メモリメーカーの在庫日数(Days of Inventory Outstanding)をサイクルの先行指標として重視する。長期トレンドとして、AIクラウドインフラへの継続的投資がサイクルの底値を切り上げており、従来の深い谷を伴うシリコンサイクルから、よりフラットな成長サイクルへの構造変化が進んでいる。