ハロー注入(ポケット注入)とは、MOSFETのソース/ドレインの周囲を取り囲むように、チャネルと同じ導電型の不純物を局所的に高濃度で注入する工程です。nMOSであればソース/ドレイン(n型)の周りにp型を、pMOSであればその逆を打ち込みます。目的は短チャネル効果の抑制です。
ゲート長が短くなると、ソースとドレインの空乏層がチャネル方向に伸びて互いに近づき、ゲートによる制御が効かなくなります。これがしきい値電圧の低下(Vthロールオフ)やパンチスルー、DIBL(ドレイン誘起障壁低下)として現れます。ハロー注入はソース/ドレイン端の不純物濃度を局所的に上げることで空乏層の広がりを物理的に抑え込み、短チャネル効果を緩和します。
注入は斜め方向から行われます。ゲート電極をマスクとして利用しつつ、その直下の端部まで不純物を回り込ませる必要があるため、大きなチルト角をつけ、ウェハを90度ずつ回転させて4方向から打ち込む「クアッドハロー」が典型的な手法です。ゲートの陰になる領域へ意図的に打ち込むという点で、シャドウイングを逆に利用した工程だと言えます。
副作用もあります。チャネル端の不純物濃度が上がることでキャリア移動度が下がり、電流駆動力が落ちます。またハロー濃度のばらつきがしきい値電圧のばらつき(ランダムドーパント揺らぎ)に直結するため、微細化が進むほどこのばらつきがSRAMの動作マージンを圧迫します。
FinFETやGAAでは事情が変わります。チャネルをゲートが三方向・全方向から囲む構造そのものが短チャネル効果を強く抑えるため、プレーナ型ほどハロー注入に依存する必要がなくなり、チャネルを無添加(アンドープ)にしてばらつきを減らす設計が可能になりました。ハロー注入は、プレーナCMOSの微細化を支えた代表的な技術です。