SEMICONDUCTOR BASICS — 比較記事

ATPGとBISTの違い(テストパターンをどこで作るか)

どちらもDFT(テスト容易化設計)の枠組みに属する技術ですが、テストの実行主体が外にあるか内にあるかという点で対照的です。実際のSoCでは両者を組み合わせ、メモリはBIST、ロジックはATPGとスキャンという役割分担を敷くのが一般的です。

最終更新: 2026-09-01

結論:ATPG(外部パターン)BIST(自己テスト)の違いは?

違いは「テストパターンを誰が作り、結果を誰が判定するか」です。ATPGはEDAツールが事前に生成したパターンをテスタから流し込み、期待値との比較もテスタ側で行います。BISTはパターン生成回路と判定回路をチップ内部に作り込み、チップ自身がテストを実行して合否だけを返します。ATPGは高いカバレッジと詳細な故障診断に優れ、BISTはテスタ依存度の低さと実速度動作、そして出荷後の自己診断に優れます。

比較表

ATPG(外部パターン)BIST(自己テスト)
ATPG(外部パターン)BIST(自己テスト)観点別比較
観点ATPG(外部パターン)BIST(自己テスト)
パターン生成EDAツールが事前に生成チップ内部の回路がその場で生成(LFSRなど)
合否判定テスタが期待値と比較チップ内部で圧縮・比較(シグネチャ照合)
テスタへの要求大容量メモリと多ピンが必要起動と結果読み出しのみ(低コストテスタで可)
テストデータ量多い(圧縮技術で削減)極めて少ない
故障カバレッジ高い(狙った故障を確実に検出)ランダムパターン依存で取りこぼしが出やすい
故障診断得意(スキャンダイアグノーシスで箇所を特定)苦手(合否のみで位置情報が乏しい)
面積オーバーヘッドスキャンチェーン分(比較的小さい)生成・判定回路の分だけ大きい
出荷後の利用不可(テスタが必要)可能(起動時の自己診断に使える)

メモリはBIST、ロジックはATPGという住み分け

メモリは構造が規則的で、マーチングパターンのようなアルゴリズムで網羅的にテストできます。パターンを内部で生成するのが容易なうえ、ビット数が膨大で外部から全データを流し込むのは非現実的なため、メモリBIST(MBIST)が事実上の標準です。一方ランダムロジックは構造が不規則で、ランダムパターンでは検出しにくい故障が残るため、狙った故障を確実に叩くATPGパターンとスキャンチェーンの組合せが使われます。この住み分けが現代SoCのDFT構成の基本形です。

テストコストの構造が違う

ATPGはパターン数が増えるほどテスタのメモリ消費とテスト時間が増え、高機能なテスタを長時間占有します。これを緩和するのがテストコンプレッションで、外部データを圧縮して内部で展開することでデータ量を1桁以上削減します。対してBISTは、テスタは起動信号を送って結果を読むだけで済むため、安価なテスタでも実行でき、テスト時間も短くなります。ただし面積オーバーヘッドという形でシリコンコストを前払いしています。

出荷後に使えるかどうか

BISTの見逃せない利点が、製造時だけでなく現場でも動かせることです。電源投入時の自己診断として組み込めば、車載や産業機器で求められる稼働中の故障検出(ISO 26262のような機能安全要求)に応えられます。ATPGパターンはテスタがなければ実行できないため、この用途には使えません。安全関連システムでBISTが重視されるのはこのためです。

関連ページ

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バウンダリスキャン(用語)
DFT(テスト容易化設計)(用語)
テスト装置カテゴリ
ウェハテストと最終テストの違い(比較)
Synopsys企業ページ(EDA・DFTツール)

よくある質問

ATPGとBISTは併用するのですか?
はい、現代のSoCでは併用が標準です。メモリブロックはMBIST、ランダムロジックはスキャンとATPGパターン、基板実装後の接続確認はバウンダリスキャンというように、対象と目的に応じて使い分け、共通のTAP(JTAG)から起動する構成が一般的です。
BISTのカバレッジが低くなりがちなのはなぜですか?
内部生成されるパターンがLFSRなどによる疑似ランダム系列であり、狙って特定の故障を活性化する設計になっていないためです。ランダムパターンでは検出しにくい故障(ランダムレジスタント故障)が残るため、テストポイントを挿入して検出性を上げる対策が併用されます。
実速度テストはどちらが得意ですか?
BISTです。内部クロックで動作するため、実際の動作周波数でのテスト(At-Speed Test)が自然に行えます。ATPGでも実速度の遷移故障テストは可能ですが、テスタ側のタイミング精度と高速クロック供給が必要になります。

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