SEMICONDUCTOR BASICS — 比較記事

ビームライン式イオン注入とプラズマドーピングの違い

どちらもウェハにドーパントを打ち込む手法ですが、イオンの届け方が根本的に違います。ビームライン式は「選別したイオンを一本のビームにして走査する」、PLADは「プラズマに浸してシースから引き込む」という構図で、この差がプロファイル精度・スループット・立体構造への適合性をすべて分けています。

最終更新: 2026-08-30

結論:ビームライン式イオン注入プラズマドーピング(PLAD)の違いは?

決定的な違いは質量分離を行うかどうかです。ビームライン式は質量分析器で狙ったイオン種だけを選別してビームとして照射するため、プロファイルを精密に制御できます。プラズマドーピング(PLAD)は分離せずプラズマから面全体へ一括してイオンを引き込むため、低エネルギー・高ドーズでも生産性が高く、トレンチ側壁のような3次元構造にも等角に打ち込めますが、不要元素の混入とエネルギー分布の広がりを伴います。

比較表

ビームライン式イオン注入プラズマドーピング(PLAD)
ビームライン式イオン注入プラズマドーピング(PLAD)観点別比較
観点ビームライン式イオン注入プラズマドーピング(PLAD)
質量分離あり(質量分析器で目的イオンのみ選別)なし(プラズマ中のイオンをまとめて引き込む)
プロファイル制御エネルギー・ドーズを精密に独立制御できるエネルギー分布に広がりがあり精度は劣る
低エネルギー・高ドーズ空間電荷効果でビーム電流が落ち時間がかかる得意(1keV以下でも生産性を確保)
3次元構造への適合直進ビームのため側壁・底部が不均一になりやすいシースから供給されるため等角性に優れる
汚染・ダメージ分離により不要元素の混入が少ない水素や分子イオンも入り表面ダメージが出やすい
チルト・ツイスト制御任意に設定でき、ハロー注入にも対応角度制御という概念がなじまない
主な適用工程チャネルドーピング・ハロー注入・ウェル形成コンタクト部の高濃度層・3D構造の側壁
代表メーカーApplied Materials・Axcelis・住友重機械・日新イオン機器Applied Materials・PSK など

低エネルギー領域でビームライン式が苦しむ理由

加速電圧を下げるとイオン同士のクーロン反発(空間電荷効果)でビームが広がり、ウェハまで運べる電流が急減します。結果として高ドーズを打つのに長時間かかり、生産性が落ちます。ビームライン式はこれに対し、高エネルギーで輸送してウェハ直前で減速するデセル方式や、BF₂⁺やクラスターイオンを使って1回の入射で実効的に低エネルギー・高ドーズを稼ぐ手法で対抗します。PLADはビームを引き回さないため、この制約自体が存在しません。

3次元構造では等角性が効いてくる

FinFETのフィン側壁、DRAMのキャパシタ、3D NANDの深い構造など、平面ではない場所にドーパントを入れる要求が増えました。直進するビームを傾けて当てるビームライン式では、深い構造の底や陰になる側壁に均一に打ち込むのが難しくなります。PLADはウェハを取り囲むシースからイオンが供給されるため、立体形状に対して比較的均一なドーピングができ、この領域で採用が広がりました。

競合ではなく工程による棲み分け

プロファイルの精度が歩留まりを決める工程(しきい値を決めるチャネルドーピング、斜め注入が必須のハロー注入、深いウェル形成)はビームライン式が担い、高ドーズ・低エネルギー・立体構造という条件が揃う工程(コンタクト部の高濃度層、3D構造の側壁)はPLADが担う、という分担が定着しています。ファブは両方を保有し、工程ごとに割り当てます。

関連ページ

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プラズマドーピング(PLAD)(用語)
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チャネリング(用語)
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イオン注入装置カテゴリ
イオン注入と熱拡散の違い(比較)
Axcelis Technologies企業ページ(イオン注入装置)
住友重機械イオンテクノロジー企業ページ

よくある質問

質量分離をしないと何が問題なのですか?
プラズマ中にはドーパント以外の分子イオンや水素も存在し、それらも一緒に打ち込まれるためです。不要元素の混入や表面ダメージが生じ、またエネルギー分布も単一ではないため、深さ方向のプロファイルを狙いどおりに作り込むことが難しくなります。
PLADはビームライン式を置き換えるのですか?
置き換えではなく棲み分けです。プロファイル精度が要る工程はビームライン式が担い続けます。PLADは低エネルギー・高ドーズ・立体構造という、ビームライン式が苦手とする条件に特化した選択肢として併用されます。
ハロー注入はPLADでできますか?
適しません。ハロー注入は大きなチルト角とツイスト角を設定してゲート直下の端部まで斜めに打ち込む工程であり、角度制御が本質です。プラズマからシース経由でイオンが供給されるPLADには、この角度制御という概念がなじみません。

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