チャネリングとは、注入イオンが単結晶シリコンの原子が疎に並ぶ結晶軸(チャネル)方向に入射したとき、原子核との衝突をほとんど受けずに想定より遥かに深くまで侵入してしまう現象です。深さプロファイルの裾が長く伸びる「チャネリングテール」として現れ、狙った接合深さを外す原因になります。
シリコンは結晶であるため、見る方向によって原子の並びが密にも疎にもなります。〈100〉や〈110〉といった主要な軸方向から見ると原子列の間に隙間(チャネル)が空いており、この方向に入ったイオンは静電的に軌道を保持されながら奥へ進みます。ランダム方向に入射した場合の飛程に比べ、数倍の深さに達することもあります。
実務上の標準的な対策が、ウェハを傾けて注入することです。多くの工程でチルト角7度前後、加えてツイスト角(面内の回転角)を22度程度つけることで、ビームが主要な結晶軸から外れるようにします。ただし傾けることで、深いパターンの陰にドーパントが入らない「シャドウイング」が生じるため、微細で高アスペクト比な構造ではチルト角を大きく取れないという制約が出ます。
もう一つの対策がPAI(プリアモルファス化注入)です。ゲルマニウムなど重いイオンをあらかじめ打ち込んで表面を非晶質にしてしまえば、そこには結晶軸そのものが存在しないため、チャネリングは原理的に起こりません。浅い接合が必要な先端ノードでは、この手法が標準的に使われます。
なお、チャネリングは注入量が増えて結晶が自然にアモルファス化してくると自動的に弱まるため、ドーズ量によって効き方が変わります。同じ条件でも注入の初期と後半でプロファイルが変わるという意味で、再現性の管理が難しいパラメータでもあります。