ビームライン式イオン注入装置とは、イオン源で生成したイオンを質量分析器で選別し、加速してビームとしてウェハへ照射する方式のイオン注入装置です。イオン注入装置と言えば通常この方式を指し、質量分離によって狙ったイオン種だけを打ち込めることが、プラズマドーピングに対する決定的な優位点です。
装置は用途別に3タイプへ明確に分化しています。①高電流機(High Current)は数mA〜数十mAの大電流で10¹⁵atoms/cm²級の高ドーズを担い、ソース/ドレインやコンタクト部の形成に使われます。②中電流機(Medium Current)は精度重視で、しきい値調整やハロー注入など低〜中ドーズの工程を担当します。③高エネルギー機(High Energy)はMeV級まで加速し、深いウェルやCMOSイメージセンサの深部構造を形成します。ファブはこの3種を工程に応じて揃えます。
低エネルギー領域では空間電荷効果が壁になります。加速電圧を下げるとイオン同士の反発でビームが広がり、ウェハまで運べる電流が急減してスループットが落ちます。これを避けるため、いったん高エネルギーで輸送してからウェハ直前で減速する「デセル方式」や、分子イオン(BF₂⁺、B₁₀H₁₄⁺などのクラスターイオン)を使って1回の入射で実効的に低エネルギー・高ドーズを稼ぐ手法が使われます。
ウェハ全面への均一な注入は走査で実現します。静電偏向や磁場でビームを走査する方式と、ウェハ側を機械的に動かす方式(枚葉のディスクスキャンやバッチ回転ディスク)があり、高電流機ではビーム電流を落とさずに済む機械走査が多く採られます。チルト角・ツイスト角を精密に設定できることも、チャネリング制御やハロー注入に不可欠な機能です。
運用上の課題は、汚染とチャージアップです。ビームラインの内壁がスパッタされて金属汚染を持ち込むリスクがあり、部材の選定とクリーニングが品質を左右します。また絶縁膜上に電荷が溜まるとゲート破壊を招くため、電子シャワーによる中和が標準装備です。主要メーカーはApplied Materials・Axcelis Technologies・住友重機械イオンテクノロジー・日新イオン機器です。