ビームライン式イオン注入装置とは

Beam-Line Ion Implanter

最終更新:2026-10-07・ビームライン式イオン注入装置・イオン注入装置|用語集のExcel・PDF版をダウンロード

ビームライン式イオン注入装置とは?

ビームライン式イオン注入装置とは、イオン源で生成したイオンを質量分析器で選別し、加速してビームとしてウェハに照射する方式の注入装置です。狙ったイオン種だけを打ち込めることが最大の強みで、高ドーズ用の高電流機・精度重視の中電流機・深いウェル用の高エネルギー機に分化しています。低エネルギー領域では空間電荷効果でビームが広がるため、デセル方式やクラスターイオンで対処します。

定義・解説

ビームライン式イオン注入装置とは、イオン源で生成したイオンを質量分析器で選別し、加速してビームとしてウェハへ照射する方式のイオン注入装置です。イオン注入装置と言えば通常この方式を指し、質量分離によって狙ったイオン種だけを打ち込めることが、プラズマドーピングに対する決定的な優位点です。

装置は用途別に3タイプへ明確に分化しています。①高電流機(High Current)は数mA〜数十mAの大電流で10¹⁵atoms/cm²級の高ドーズを担い、ソース/ドレインやコンタクト部の形成に使われます。②中電流機(Medium Current)は精度重視で、しきい値調整やハロー注入など低〜中ドーズの工程を担当します。③高エネルギー機(High Energy)はMeV級まで加速し、深いウェルやCMOSイメージセンサの深部構造を形成します。ファブはこの3種を工程に応じて揃えます。

低エネルギー領域では空間電荷効果が壁になります。加速電圧を下げるとイオン同士の反発でビームが広がり、ウェハまで運べる電流が急減してスループットが落ちます。これを避けるため、いったん高エネルギーで輸送してからウェハ直前で減速する「デセル方式」や、分子イオン(BF₂⁺、B₁₀H₁₄⁺などのクラスターイオン)を使って1回の入射で実効的に低エネルギー・高ドーズを稼ぐ手法が使われます。

ウェハ全面への均一な注入は走査で実現します。静電偏向や磁場でビームを走査する方式と、ウェハ側を機械的に動かす方式(枚葉のディスクスキャンやバッチ回転ディスク)があり、高電流機ではビーム電流を落とさずに済む機械走査が多く採られます。チルト角・ツイスト角を精密に設定できることも、チャネリング制御やハロー注入に不可欠な機能です。

運用上の課題は、汚染とチャージアップです。ビームラインの内壁がスパッタされて金属汚染を持ち込むリスクがあり、部材の選定とクリーニングが品質を左右します。また絶縁膜上に電荷が溜まるとゲート破壊を招くため、電子シャワーによる中和が標準装備です。主要メーカーはApplied Materials・Axcelis Technologies・住友重機械イオンテクノロジー・日新イオン機器です。

図解

ビームライン式イオン注入装置の3系統(高電流・中電流・高エネルギー)と用途
プラズマから一括で打ち込むプラズマドーピングと対になる方式。

紛らわしい言葉の切り分け

ビームライン式イオン注入とプラズマドーピング。違いは打ち込むイオンを選び分けるかどうかです。ビームライン式は質量分析で狙ったイオンだけを選んで打つため、分布を精密に制御できます。プラズマドーピングは選別せずにプラズマから一括で打ち込むため、低エネルギー・高ドーズでの生産性が高く、立体構造の側面にも打ち込めます。 比較記事 →

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計算ツールイオン注入プロファイル計算ツール(Rp・ピーク濃度・接合深さ)

よくある質問(FAQ)

高電流機・中電流機・高エネルギー機はどう違いますか?▾
担当する条件が違います。高電流機は10¹⁵atoms/cm²級の高ドーズでソース/ドレイン形成、中電流機は精度重視でしきい値調整やハロー注入、高エネルギー機はMeV級まで加速して深いウェルやイメージセンサの深部構造を形成します。ファブは3種を工程に応じて揃えます。
低エネルギー注入が難しいのはなぜですか?▾
空間電荷効果のためです。加速電圧を下げるとイオン同士の反発でビームが広がり、ウェハまで運べる電流が急減してスループットが落ちます。高エネルギーで輸送してウェハ直前で減速するデセル方式や、クラスターイオンを使う手法で対処します。
質量分析器は何のためにあるのですか?▾
イオン源で生成された多種のイオンから、目的のドーパントイオンだけを磁場で選別するためです。これにより不要な元素の混入を防げます。質量分離を行わないプラズマドーピングに対する、ビームライン式の決定的な優位点です。

設備の製造メーカー

Applied Materials米国

世界最大の半導体製造装置サプライヤー。成膜、除去、改質、分析の包括的な製品ポートフォリオで、ウェーハ製造の全工…

Axcelis Technologies米国

イオン注入装置の専業メーカー。Purionシリーズで低〜高エネルギーの注入をカバーし、先端ロジック・メモリ・S…

住友重機械イオンテクノロジー日本

住友重機械工業グループのイオン注入装置専業メーカー。半導体前工程のドーパント注入から、太陽電池・パワー半導体向…

日新イオン機器日本

イオン注入装置の専業メーカーとして、中電流・高電流・超高エネルギーイオン注入装置を展開。パワー半導体・CMOS…

この用語に関連する製品

型番は各社の公式製品ページで確認したものです。出典のリンクは各製品ページに載せています。

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出典・参考資料

  1. Applied Materials「VIISta Trident 製品ページ」(2026/10/07 確認)
  2. Axcelis Technologies「Purion H 製品ページ」(2026/10/07 確認)
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