結論:Cu-CMP(銅ダマシン)とW-CMP(タングステンプラグ)の違いは?
どちらも金属を酸化させてから削るメタルCMPですが、材料の性格が正反対です。銅は軟らかく腐食しやすいため、BTAなどの腐食防止剤で凹部を守りながら凸部だけを削るという化学設計が中心になり、ディッシングとエロージョンが主要な課題です。タングステンは硬く化学的に安定なため、強い酸化剤を含む酸性スラリーで削り、硬い研磨屑によるスクラッチと下地バリアとの選択比管理が課題になります。
比較表
| 観点 | Cu-CMP(銅ダマシン) | W-CMP(タングステンプラグ) |
|---|---|---|
| 対象材料の性格 | 軟らかく、酸化・腐食しやすい | 硬く、化学的に安定 |
| スラリーのpH | 中性〜弱酸性・弱アルカリ(配合による) | 酸性が主流 |
| 化学の主役 | 酸化剤+錯化剤+腐食防止剤(BTA) | 強い酸化剤(鉄塩・過酸化水素など) |
| 腐食防止剤の役割 | 凹部の銅表面を保護し等方エッチングを防ぐ(必須) | 相対的に重要度は低い |
| 下地・ストッパ | バリアメタル(TaN/Ta)→ 絶縁膜 | バリア(TiN)→ 絶縁膜 |
| 主な欠陥モード | ディッシング・エロージョン・銅の腐食とボイド | スクラッチ・プラグの引き抜け(プラグリセス) |
| 工程構成 | 主研磨+バリアCMPの2ステップ以上 | 1〜2ステップ |
| ポストCMP洗浄 | クエン酸等の錯化剤系でCuイオンとBTA残渣を除去 | 残留砥粒と金属粒子の除去が中心 |
Cu-CMPは「守りながら削る」設計
銅は酸化剤に対して素直に反応するため、放っておけば凹部の配線まで溶けて痩せてしまいます。そこでBTA(ベンゾトリアゾール)などの腐食防止剤が銅表面に保護膜を作り、化学的な溶解を止めます。凸部では砥粒がこの保護膜を機械的に剥がすため、そこだけ酸化と溶解が進み、結果として凸部が選択的に削れて平坦化します。守る化学と剥がす機械の均衡でプロセスが成り立っているため、酸化剤・錯化剤・BTAの濃度バランスが崩れると一気に欠陥が出ます。
W-CMPは硬さゆえの難しさ
タングステンは硬く化学的にも安定なため、強い酸化剤でWO₃などの変質層を作らなければ削れません。一方でこの硬さは研磨屑の硬さでもあり、削れたW粒子がそのままスクラッチの原因になります。加えて、プラグ部分だけを残して周囲を削る構造上、削りすぎればプラグが下がって(リセス)コンタクト抵抗が上がり、削り足りなければWが残ってショートします。TiNバリアと絶縁膜に対する選択比の設計が終点を決めます。
共通する後始末:ポストCMP洗浄
どちらの工程も、研磨直後のウェハ表面は砥粒と金属イオンで覆われています。Cu-CMP後はクエン酸などの錯化剤を含む薬液で銅イオンを可溶化しつつBTA残渣も落とし、W-CMP後は残留砥粒と硬い金属粒子の除去が中心になります。いずれも乾かすとスラリーが固着するため、研磨から洗浄まで濡れたまま搬送するウェットハンドオフが前提です。