結論:セリア(CeO₂)スラリーとシリカ(SiO₂)スラリーの違いは?
違いは砥粒の化学的な性格です。セリア(CeO₂)はSiO₂と化学的に反応しやすく、低い研磨圧力でも高いレートが得られ、添加剤によってSiNとの選択比を大きく取れるため、ストッパ膜を使うSTI-CMPの主役になります。シリカ(SiO₂)は化学反応性が穏やかで機械的な除去の比率が高く、汎用性とコストに優れるため、ILD-CMPや金属CMPの下地研磨など広い用途で使われます。
比較表
| 観点 | セリア(CeO₂)スラリー | シリカ(SiO₂)スラリー |
|---|---|---|
| 除去メカニズムの重心 | 化学的反応が主(SiO₂と直接反応する) | 機械的除去の比率が高い |
| SiO₂への研磨レート | 高い(低圧でもレートが出る) | 中程度(圧力を要する) |
| SiN(ストッパ膜)との選択比 | 添加剤で大きく取れる(STI-CMP向き) | 取りにくい |
| 必要な研磨圧力 | 低圧で足りる(パターン依存の凹凸を抑えやすい) | 相対的に高圧が必要 |
| 凝集・スクラッチ | 凝集しやすく管理がシビア | 分散安定性が比較的良い |
| コスト | 高い(希土類原料) | 安価で供給も安定 |
| 主な用途 | STI-CMP、酸化膜の高選択比研磨 | ILD-CMP、金属CMPの下地、ウェハ製造の仕上げ研磨 |
| 代表メーカー | CMC Materials・フジミ・レゾナック | CMC Materials・フジミ・Merck各社 |
低圧で研磨できることの意味
セリアが低い圧力で高いレートを出せることは、単に生産性の話ではありません。CMPで生じるディッシング(幅広配線の凹み)やエロージョン(密集部の全体低下)は、パッドが局所的にたわむことに起因するため、圧力を下げられればこれらのパターン密度依存の凹凸を構造的に抑えられます。加えて、多孔質low-k膜のような機械的に弱い材料でも剥離やスクラッチのリスクを下げられます。
選択比とストッパ膜の関係
STI-CMPでは、活性領域の上に残したSiNをストッパ膜として使い、SiNが露出した時点で研磨が実質的に止まるように設計します。これが成立するにはSiO₂とSiNの除去レート比が十分に大きい必要があり、セリアスラリーはSiN表面に吸着して保護する添加剤と組み合わせることでこの選択比を作り込みます。シリカ系ではここまでの選択比を取りにくいため、STI-CMPではセリアが選ばれます。
セリアの弱点は凝集とコスト
セリア粒子は分散安定性がシリカに劣り、凝集して大きな塊になるとスクラッチの直接の原因になります。そのため使用直前のポイントオブユースフィルタによるろ過と、低せん断ポンプによる搬送が欠かせません。また希土類を原料とするためコストが高く、供給リスクも意識される材料です。汎用の平坦化にはシリカ、選択比が要るところにセリア、という棲み分けが基本になります。