エロージョン(Erosion)はCMP後に配線密集部全体が過剰研磨で低下する現象。ディッシングとの違い、パターン密度依存の研磨速度差が原因。ダミーパターン挿入・スラリー添加剤・EPD精密制御による対策をわかりやすく解説。
エロージョン(Erosion)とは、CMP(化学機械研磨)プロセス後に、配線パターンが高密度に集まった領域(ライン/スペースパターンのActive領域)で、配線だけでなく周囲の絶縁膜も過剰に研磨されて全体が低下する現象です。配線密集部では研磨パッドが局所的に沈み込みやすく、配線と絶縁膜を合わせた全体が周辺の孤立配線部より深くなります。ディッシング(配線内の凹み)とは異なり、パターン全体の高さが低下するのがエロージョンの特徴です。
エロージョンの発生メカニズムは、CMP研磨パッドの「局所的たわみ」と配線の「パターン密度依存性」にあります。配線密集部(例えば50%以上のdensity)では、パッドが配線と絶縁膜を均等に押しつぶすため、スラリーの接触圧力が高く維持され、配線(例:Cu)が研磨終了した後も絶縁膜(SiO₂・low-k)を過剰に研磨します。孤立配線部ではパッドが隣接絶縁膜に接触しにくく研磨が進みにくいため、密集部と孤立部の段差(エロージョン量)として現れます。
エロージョンの影響には、①電気的影響:配線断面積のばらつきによる面内での抵抗値ばらつき・RC遅延のばらつき、②形状影響:パターン密度の高い部分で表面高さが低くなりウェハ面内の平坦度が低下、③多層配線への影響:エロージョン量が積み上がると後工程の露光・CMP等のプロセスウィンドウを狭める、があります。先端ロジック(3nm以下)の多層配線ではエロージョン量<5nmの制御が要求されます。
エロージョンの対策として、①ダミーパターン(Dummy Fill)の挿入:配線間の空き領域にダミー金属や絶縁膜のパターンを埋め込みパターン密度を均一化(密度55〜65%に標準化)、②スラリー組成の最適化:絶縁膜の研磨速度を金属の研磨終了後に急減速させる添加剤の使用、③研磨パッドの硬度・弾性選択、④プロセスエンドポイント精密制御(光学式EPD)、⑤TMD/TEOS cap層の導入(保護絶縁膜層の追加)があります。
エロージョンの計測はAFM・段差計・散乱光計測(OCD:Optical Critical Dimension)で行われ、ウェハ面内のパターン密度別に計測点を設定して評価します。ディッシングとエロージョンを合わせた「CMP総合非均一性」が0.1nm以下を目指す先端プロセスでの制御要求への対応が、Applied Materials・荏原製作所・SKCのCMPスラリー・装置・パッドの研究開発の重点課題です。