ディッシング(Dishing)は銅ダマシンCMP後に幅広い配線中央部がくぼむ現象。パッドのたわみによるCu優先研磨が原因。抵抗増加・フォーカスマージン低下への影響とBTA腐食抑制剤・スラリー最適化による対策をわかりやすく解説。
ディッシング(Dishing)とは、CMP(化学機械研磨)プロセス後に、配線やプラグなどの金属パターン(特に幅の広いパターン)の中央部が過剰に研磨されてくぼみが生じる現象です。研磨後の金属表面断面がお皿(dish)のように凹んで見えることからこの名称がついています。銅ダマシン配線プロセスでの銅(Cu)CMPにおいて特に顕著に現れ、配線の電気抵抗増加・寄生容量変化・後工程でのフォーカスマージン低下の原因となります。
ディッシングが発生するメカニズムは、CMPの研磨パッドが柔軟性を持つため、金属が埋め込まれたトレンチ(溝)の上では金属に優先的に接触し、金属を周囲の絶縁膜より速くエッチングしてしまうことです。特に幅広い配線(数μm〜数十μm)ほどパッドが配線上に大きくたわみやすいため、ディッシング量が大きくなる傾向があります。典型的なCuディッシングは数十nm〜200nm程度で、プロセス条件・スラリー・パッドによって異なります。
ディッシングの影響として、①電気的影響:配線断面積の減少による電気抵抗(R)増加、RC遅延の増大、②形状影響:後続の露光工程でウェハ表面の平坦度が低下しフォーカス余裕が減少、③信頼性影響:ディッシング量の面内ばらつきが論理・メモリチップの性能ばらつきに直結する、があります。特に先端CMOSでは10nm以下のディッシング制御が必要になっています。
ディッシングを低減するための技術的対策として、①スラリー選択比の最適化(金属と絶縁膜の研磨速度比の調整)、②化学的添加剤(腐食抑制剤BTA:ベンゾトリアゾール等の添加で銅の過剰溶解を抑制)、③研磨パッドの硬度選択(硬いパッドは段差追従性が低くディッシングを抑制)、④研磨時間・圧力制御、⑤パターン密度の設計ルール(広い配線にスロット/ダミーパターンを挿入して実効配線幅を下げる)があります。
ディッシングの計測にはAFM(原子間力顕微鏡)や光学式段差計(段差メーター)が使われ、ウェハ面内複数点での測定値から均一性を評価します。ディッシングはエロージョン(配線密集部の過剰研磨)と合わせてCMP品質の主要指標として管理されます。Applied Materials(Reflexion)・荏原製作所(FREX)・KCTechが先端CMPでのディッシング制御技術を競っています。