結論:ラッピングと両面研磨(DSP)の違いは?
ラッピングと両面研磨の違いは「削るのか、磨くのか」です。ラッピングは数μmのアルミナ・SiC砥粒を転がして機械的に削る粗加工で、厚みと平坦度を短時間で作れる代わりに表面下に加工変質層が残ります。両面研磨(DSP)はコロイダルシリカとアルカリによる化学機械研磨で、除去は遅いものの鏡面かつ無ダメージの表面と高い局所平坦度が得られます。工程順はラッピングが先、DSPが仕上げで、両者は競合ではなく前後関係にあります。
比較表
| 観点 | ラッピング | 両面研磨(DSP) |
|---|---|---|
| 加工の原理 | 遊離砥粒が転がり微小破壊で削る(機械的) | アルカリで軟化させ砥粒で除去(化学機械研磨) |
| 砥粒 | アルミナ・炭化ケイ素、粒径数μm | コロイダルシリカ、粒径数十nm |
| 工程での位置 | スライス直後の粗加工 | エッチング後の仕上げ加工 |
| 除去レート | 大きい(取り代を短時間で除去) | 小さい(μm以下を精密に制御) |
| 加工変質層 | 数μmのダメージ層が残る | 残らない(無ダメージの鏡面) |
| 表面粗さ | 梨地(マット) | 鏡面(Ra 0.1nm級まで到達可能) |
| 主に効く指標 | 厚みばらつき・全体平坦度 | 局所平坦度(SFQR)・ナノトポグラフィ |
| 代表メーカー | SpeedFam・Lapmaster Wolters・浜井産業 | SpeedFam・Lapmaster Wolters・各ウェハメーカー内製 |
なぜ2工程に分けるのか
スライス直後のウェハには数十μmの厚みばらつきとソーマークが残っており、これをいきなり研磨で削り落とそうとすると膨大な時間がかかります。そこで、除去レートの高いラッピングで形を整え、その過程で入った加工変質層をエッチングで化学的に除去し、最後に鏡面研磨で表面品質を作る、という役割分担が生まれました。硬い砥粒で速く削る工程と、化学反応で優しく仕上げる工程を分離するのが基本思想です。
両面同時加工が平坦度に効く理由
片面ずつ加工する方式では、ウェハを定盤に吸着または貼り付けて固定する必要があり、裏面の凹凸や接着層の歪みがそのまま表面形状に転写されます。両面同時方式ではウェハがキャリアに保持されて上下から均等に圧力を受け、拘束されない状態で加工されるため、この転写が起きません。露光の焦点余裕が浅くなった300mm世代でDSPが標準化したのは、この原理的な優位性によります。
ラッピングから両面研削(DDG)への置き換え
近年は、ラッピングの代わりに固定砥粒による両面研削(DDG:Double Disk Grinding)を採用する工程が増えています。砥粒が固定されているためスラリー処理が不要で、加工が速く、ダメージ層も比較的浅く抑えられます。ただし平坦度の作りやすさではラッピングにも利点が残るため、ウェハメーカーごとに工程構成の思想が分かれる領域です。