両面研磨(DSP:Double Side Polishing)とは、ウェハの表と裏を同時に研磨する工程です。研磨布を貼った上下の定盤でウェハを挟み、コロイダルシリカを含むアルカリ性スラリーを供給しながら、キャリアに保持したウェハを遊星運動させて両面を同時に加工します。300mmウェハの平坦度を作り込む中核工程です。
片面ずつ研磨する方式に対する決定的な利点は、平坦度が本質的に良くなることです。片面研磨ではウェハを定盤に吸着または貼り付けて固定するため、裏面の凹凸や貼り付けの歪みがそのまま表面形状に転写されます。両面研磨ではウェハが上下から均等に圧力を受けて自由に浮いた状態で加工されるため、この転写が起こらず、TTVやナノトポグラフィが大幅に改善します。
DSPが必須になったのは、リソグラフィの焦点余裕(DOF)が浅くなったためです。露光装置はウェハを真空またはピンチャックで保持するため、裏面の凹凸は表面の高さ変動に直結します。局所平坦度(SFQR)が規格を外れると露光時にパターンがぼけ、微細化が進むほどウェハ平坦度への要求は厳しくなります。
工程順としては、ラッピング(または両面研削)→ エッチングで加工変質層を除去 → DSPで平坦度と鏡面性を作る → 最終仕上げ研磨(ファイナルポリッシュ)で表面粗さとヘイズを詰める、という流れが標準です。仕上げ研磨は片面のみを軽く磨く工程で、ここでの粗さ(Ra 0.1nm級)とパーティクルレベルが出荷品質を決めます。
使用するスラリーはコロイダルシリカ(粒径数十nm)とアルカリ(KOH・アンモニア系)の組合せで、シリコン表面を化学的に軟化させながら砥粒で除去する、CMPと同じ化学機械研磨の原理です。ウェハメーカー各社が装置・スラリー・研磨布・キャリアの組合せをノウハウとして囲い込んでいる領域でもあります。