SEMICONDUCTOR BASICS — 比較記事

エピタキシャルウェハとポリッシュドウェハの違い

同じシリコンウェハでも、研磨しただけのポリッシュドウェハと、その上にエピタキシャル層を成長させたエピウェハでは、表層の素性がまったく違います。前者は「インゴットの一部を切り出したもの」、後者は「気相から新しく作った単結晶の表面」です。この違いが、ゲート酸化膜の耐圧、濃度プロファイルの自由度、そして価格に表れます。

最終更新: 2026-08-17

結論:ポリッシュドウェハエピタキシャルウェハの違いは?

ポリッシュドウェハは単結晶インゴットを切って研磨しただけのウェハで、表層にはCOP(結晶起因ピット)などインゴット由来の欠陥がそのまま残ります。エピタキシャルウェハはその上に単結晶シリコン層を数μm〜数十μm成長させたもので、表層が新たに作られるためCOPが無く、基板と表層で不純物濃度・導電型を独立に設計できます。その代わりエピ成長の分だけ高価になります。

比較表

ポリッシュドウェハエピタキシャルウェハ
ポリッシュドウェハエピタキシャルウェハ観点別比較
観点ポリッシュドウェハエピタキシャルウェハ
表層の作られ方インゴットをスライスして研磨した面基板上に気相成長させた新しい単結晶層
COP(結晶起因欠陥)結晶由来のCOPが表層に存在するエピ層には無い(下地のCOPを覆い隠す)
濃度プロファイルインゴットの濃度がそのまま(軸方向に変化)基板と表層で独立に設計可能(p+基板/p-エピ等)
酸素濃度CZ由来の格子間酸素を含みゲッタリングに有利エピ層はほぼ酸素を含まない(基板側で補う)
ゲート酸化膜耐圧(GOI)COPの影響を受けやすい良好
コスト安価(基準となる標準品)エピ成長工程の分だけ高価
主な用途汎用ロジック・メモリ・一般用途先端CMOS・パワーデバイス・イメージセンサ・SiCデバイス
中間の選択肢アニールウェハ(表層のCOPを熱処理で消滅)

パワー半導体でエピウェハが必須になる理由

縦型パワーMOSFETやIGBTでは、耐圧はドリフト層の厚みと不純物濃度で決まります。低抵抗の基板の上に、狙った濃度・厚みの高抵抗層を精密に成長させられるエピタキシャルウェハは、この構造をそのまま実現する手段です。逆に言えば、エピ層の膜厚均一性と抵抗率均一性のばらつきが、そのままデバイスの耐圧とオン抵抗のばらつきになります。SiCデバイスでは、基板のベーサル面転位をエピ成長段階で低減する役割も担います。

アニールウェハという第三の選択肢

表層のCOPさえ消せればよく、濃度設計の自由度は不要という用途では、水素またはアルゴン雰囲気で1,200℃前後の熱処理を施したアニールウェハが選ばれてきました。原子の拡散・再配列によって表層のボイドが埋まり、エピ成長より安価に無欠陥層が得られるためです。DRAMなどメモリ用途で広く使われましたが、無欠陥結晶(パーフェクトクリスタル)の量産技術が確立したことで位置づけは変化しています。

選定は「何を買っているか」で考える

ポリッシュドウェハを選ぶことは、インゴットの品質をそのまま受け入れることを意味します。エピウェハを選ぶことは、表層の結晶品質と濃度プロファイルを追加コストで買うことです。判断材料は、ゲート絶縁膜の耐圧要求、必要な濃度プロファイル、ゲッタリング能力をどこで確保するか、そして製品の価格帯です。同じ設計でもウェハ種を変えれば歩留まりとコストの両方が動くため、デバイスメーカーとウェハメーカーが仕様を詰める領域になっています。

関連ページ

エピタキシャルウェハ(用語)
アニールウェハ(用語)
COP(結晶起因ピット)(用語)
格子間酸素(用語)
ゲッタリング(用語)
エピタキシー(用語)
シリコンウェハ製造(用語)
化合物基板カテゴリ
信越化学工業企業ページ(シリコンウェハ最大手)
SUMCO企業ページ(シリコンウェハ)

よくある質問

エピウェハはどのくらい高価ですか?
エピ成長は枚葉処理で1枚ずつ時間をかけるため、ポリッシュドウェハに対して明確な価格上乗せがあります。上乗せ幅はエピ層の厚み・仕様・口径によって変わるため一律ではありませんが、量産では「エピ層が必要なデバイスかどうか」でコスト構造が変わるほどの差になります。
エピ層があればゲッタリングは不要ですか?
不要にはなりません。エピ層自体は酸素をほとんど含まないため、イントリンシックゲッタリングの働きは基板側が担います。CZ基板の酸素析出物(BMD)が金属不純物を捕獲し、その上のエピ層でデバイスを作るという役割分担になります。
イメージセンサでエピウェハが使われるのはなぜですか?
暗電流の原因となる金属不純物と結晶欠陥を極力減らす必要があるためです。エピ層は結晶品質が高く不純物濃度を精密に制御できるうえ、基板側でゲッタリングを効かせられるため、微弱な光信号を扱うセンサに適した構造が作れます。

関連する比較記事

CZ法とFZ法の違い(シリコン単結晶成長の比較)

読む →
ウェハ製造

ラッピングと両面研磨(DSP)の違い

読む →
製造基盤

300mmウェーハと200mmウェーハの違い(コスト・用途・設備の比較)

読む →
化合物基板

GaN-on-SiとGaN-on-SiCの違い

読む →
洗浄

メガソニック洗浄と二流体洗浄の違い

読む →
← 比較記事一覧に戻る