SEMICONDUCTOR BASICS — 比較記事

GaN-on-SiとGaN-on-SiCの違い

GaNは自立基板が高価で入手性も限られるため、実用デバイスの多くは異種基板の上にGaN層をヘテロエピタキシャル成長させて作られます。その基板として競合するのがシリコンとSiCで、どちらを選ぶかによってコスト構造・放熱性能・使える口径・適用できる用途が大きく変わります。

最終更新: 2026-08-17

結論:GaN-on-SiGaN-on-SiCの違いは?

両者の違いは「コストを取るか、放熱を取るか」に集約されます。GaN-on-Siは基板が安価で200mmまで大口径化でき、既存のシリコン製造ラインを流用できるため、650V以下のパワースイッチや民生用途でコスト優位に立ちます。GaN-on-SiCは基板が高価で口径も小さい一方、SiCの高い熱伝導率により発熱を逃がせるため、基地局や防衛用途の高出力RFアンプで主流です。

比較表

GaN-on-SiGaN-on-SiC
GaN-on-SiGaN-on-SiC観点別比較
観点GaN-on-SiGaN-on-SiC
基板コスト安価(シリコンウェハ)高価(PVT法で作るSiC基板)
対応口径150〜200mmが実用、大口径化しやすい150mmが主流、200mmへ移行中
格子不整合約17%と大きい約3.4%と小さい
熱膨張差約54%と大きくクラック対策が必要小さく応力管理が比較的容易
バッファ層AlN核生成層+傾斜/超格子バッファが必須薄いAlN核生成層で足りる
熱伝導率(基板)約150 W/m·K約370〜490 W/m·K(放熱に有利)
主な用途650V以下のパワースイッチ、急速充電器、電源基地局・衛星・防衛用の高出力RFアンプ
製造ライン既存のシリコンラインを流用可能化合物半導体専用ラインが中心

シリコン基板が技術的に難しい理由

GaNとシリコンは格子定数が約17%、熱膨張係数が約54%も違います。そのまま成長させれば転位が大量に発生し、降温時の引張応力でウェハにクラックが入ります。これを回避するため、まずシリコンと反応しないAlN核生成層で表面を完全に覆い(メルトバック・エッチングの防止)、その上にAl組成を段階的に変える傾斜バッファ層や超格子バッファを重ねて、応力と転位を段階的に緩和する多層構造が使われます。この複雑なバッファ設計そのものが各社の技術的な差別化点です。

放熱がRF用途で決定的になる理由

高周波電力増幅器では、チップ面積あたりの発熱密度が非常に高くなります。GaN自体の性能が優れていても、発生した熱を基板側へ逃がせなければチャネル温度が上がり、出力と信頼性が低下します。SiCの熱伝導率はシリコンの2〜3倍あり、この放熱経路の差がそのまま扱える出力の差になるため、基地局や衛星通信のような高出力RF用途ではGaN-on-SiCが選ばれます。

棲み分けは今後も続くのか

パワースイッチ領域では、GaN-on-Siのコストと口径の優位が明確で、急速充電器やデータセンター電源での採用が広がっています。一方、高出力RFではSiC基板の放熱優位が動かしにくく、両者は競合というより用途による棲み分けの関係にあります。加えて、成長後にシリコン基板を除去して素子層だけを高熱伝導体へ転写する手法も研究されており、「基板を選ぶ」という前提自体を変える方向も模索されています。

関連ページ

GaN-on-Si(用語)
GaN(窒化ガリウム)(用語)
SiCウェハ(用語)
PVT法(昇華法)(用語)
HEMT(用語)
サファイア基板(用語)
MOCVD(用語)
化合物基板カテゴリ
SiCとGaNの違い(比較)
AIXTRON企業ページ(MOCVD装置)

よくある質問

GaN自立基板は使われないのですか?
使われますが用途は限定的です。転位密度が桁違いに低く高性能なデバイスが作れる一方、製造が難しく非常に高価で口径も小さいため、レーザーダイオードなど結晶品質が決定的に効く用途が中心です。量産デバイスの多くは異種基板上のヘテロエピタキシャル成長で作られます。
GaN-on-Siで高耐圧デバイスは作れますか?
現状の主戦場は650V以下です。耐圧を上げるにはGaN層を厚くする必要がありますが、シリコンとの熱膨張差による反りとクラックが厚膜化を制約します。1,200V級以上の高耐圧領域では、SiC MOSFETが有力な選択肢として位置づけられています。
メルトバック・エッチングとは何ですか?
GaやAlが高温でシリコンと合金化し、シリコン表面を激しく侵食してしまう現象です。成長初期にシリコンが露出していると発生するため、シリコンと反応しないAlN層で表面を隙間なく覆うことが、GaN-on-Si成長の絶対条件になっています。

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