SEMとTEMの違い

SEMとTEMはどちらも電子線を使う顕微鏡で、光学顕微鏡では見えないナノメートル領域を観察するために使われます。名前は似ていますが、電子と試料の関わり方が根本的に異なり、その結果として見える情報、必要な試料、使われる場所がまったく違います。ここでは原理の違いから出発し、半導体の製造ラインと解析ラボでそれぞれがどう使われているかを整理します。

最終更新: 2026-09-14

結論:SEM(走査型電子顕微鏡)TEM(透過型電子顕微鏡)の違いは?

最大の違いは「電子を試料の表面から出てくる信号で見るか、試料を透過させて見るか」です。SEMは細く絞った電子線で試料表面を走査し、表面から出てくる二次電子などを検出するので、厚い試料やウェハのままでも表面形状を観察でき、分解能はおおむね1nm前後です。TEMは厚さ100nm以下に薄片化した試料に高エネルギーの電子を透過させるため、原子の並びまで見える0.1nm以下の分解能が得られますが、試料作製に時間がかかり、観察した試料は製品に戻せません。半導体では、ラインでの寸法計測や欠陥観察はSEM、ゲート絶縁膜の厚さや界面を原子レベルで確かめるプロセス開発・故障解析はTEMという役割分担です。

比較表

SEM(走査型電子顕微鏡)TEM(透過型電子顕微鏡)
SEM(走査型電子顕微鏡)TEM(透過型電子顕微鏡)観点別比較
観点SEM(走査型電子顕微鏡)TEM(透過型電子顕微鏡)
観察の原理電子線で表面を走査し、表面から出る二次電子・反射電子を検出して像にする薄片試料に電子線を透過させ、透過電子や回折電子を結像する
分かる情報表面の凹凸・形状、断面形状、組成によるコントラスト内部構造、結晶の格子像、界面、結晶欠陥
分解能の目安1nm前後(装置と観察条件による)0.1nm以下(収差補正付きではさらに高い)
加速電圧数百V〜30kV程度80〜300kV程度
試料の厚さ制約なし。ウェハのままでも観察できる電子が透過できる100nm以下の薄片が必要
試料作製表面観察なら不要なことが多い。断面は割断やFIB加工FIBなどによる薄片化が必須で、数時間単位の作業
破壊・非破壊低加速のインライン装置はウェハを工程に戻せる破壊的。観察した箇所は製品にならない
観察範囲広い視野から高倍率まで連続して探せる薄片化した狭い領域に限られる
半導体での主な用途CD-SEMによる線幅計測、レビューSEMによる欠陥観察、断面観察ゲートスタックの膜厚・界面評価、GAA構造の確認、故障解析
組み合わせる分析EDX(エネルギー分散型X線分析)STEM、EDX、EELS(電子エネルギー損失分光)

表面から出る信号か、透過した電子か

SEMでは、数nmまで細く絞った電子線を試料表面でラスター状に走査します。電子が当たった点からは二次電子や反射電子が飛び出し、その量を点ごとに記録して画像を組み立てます。二次電子は表面のごく浅い部分からしか出てこないため、得られる像は表面の凹凸を強く反映したものになります。TEMでは、試料を電子が突き抜けられるほど薄くしておき、高エネルギーの電子線を透過させます。試料内部の原子で散乱・回折された電子をレンズで結像するので、表面ではなく厚さ方向に投影された内部構造が見え、条件がそろえば原子の列そのものが格子像として写ります。

製造ラインで使えるのはSEM

量産ラインで日常的に使われる電子顕微鏡はSEM系です。CD-SEMはレジストやエッチング後のパターン線幅を、ウェハを割らずに上から測ります。電子線によるダメージやチャージアップを避けるため、加速電圧を1kV前後以下まで下げて観察するのが特徴です。レビューSEMは、光学式などの欠陥検査装置が見つけた欠陥の座標へ移動し、その形状を拡大して分類します。どちらも測定後のウェハはそのまま工程に戻せます。TEMは試料を薄片化する時点でウェハの一部を切り出すため、ラインの工程管理に組み込むことはできません。

TEMが必要になる場面

ゲート絶縁膜やGAAのナノシートが数nmの厚さになると、SEMの分解能では膜の境界がぼやけ、正確な厚さや界面の状態を判断できません。High-k膜と界面層の厚さ、メタルゲートの埋め込み具合、エピタキシャル層の結晶欠陥といった情報は、原子レベルの分解能を持つTEMでなければ確かめられません。電子線を細く絞って走査するSTEMモードでEDXやEELSを組み合わせれば、構造と元素分布を同じ場所で重ねて見られます。新しい工程の条件出しや、電気特性の不良原因を物理的に特定する故障解析で、TEMは最終的な確認手段になっています。

ボトルネックは試料作製

TEMの実務上の制約は、観察そのものより試料作製にあります。狙ったトランジスタを含む領域をFIB(集束イオンビーム)で削り出し、厚さ数十nmまで薄くするには、熟練した作業で数時間かかります。薄片化の途中でイオンビームによるダメージ層ができると、それ自体が観察結果を歪めます。そのため、まずSEMで広い範囲を観察して異常箇所を絞り込み、狙いを定めてTEM試料を作る、という順番で両者を組み合わせるのが一般的です。FIBとSEMを1台にまとめたFIB-SEMは、この絞り込みと試料作製を同じ装置内で行うための装置です。

まとめ(どちらを選ぶか)

ウェハを壊さずに形状や寸法を大量に測りたい、欠陥を探して分類したいならSEMです。膜厚や界面、結晶構造を原子レベルで確かめたい、不良の物理的な原因を突き止めたいならTEMです。判断の軸は分解能だけでなく、「試料を壊してよいか」「どれだけ時間をかけられるか」にあります。

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よくある質問

SEMでも断面は観察できますか?
できます。ウェハを割断したり、FIBで断面を切り出したりすれば、SEMで断面形状を観察できます。ただし数nmの膜の厚さや界面の原子配列まで判断したい場合は、分解能の点でTEMが必要になります。
STEMはSEMとTEMのどちらに近いですか?
STEM(走査透過型電子顕微鏡)は、TEMと同じく薄片試料を透過した電子を検出しますが、SEMのように細く絞った電子線を走査して像を作ります。試料の条件と分解能はTEM側、像の作り方はSEM側に近い方式で、元素分析を点ごとに重ねやすいのが特長です。
TEMの試料はどれくらい薄くする必要がありますか?
一般には100nm以下、原子レベルの格子像を得たい場合は数十nm程度まで薄くします。加速電圧が高いほど厚い試料を透過できますが、薄いほど像はシャープになります。
主な装置メーカーはどこですか?
SEMでは日立ハイテク、日本電子(JEOL)、Thermo Fisher Scientific、Carl Zeissなどが、TEMでは日本電子、日立ハイテク、Thermo Fisher Scientificなどが主要メーカーです。半導体ライン向けのCD-SEMでは日立ハイテクが大きなシェアを持ちます。

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