結論:サイリスタとトランジスタ(BJT・MOSFET・IGBT)の違いは?
最大の違いは、オフにする方法です。サイリスタはPNPNの4層構造のスイッチで、ゲートに信号を入れると導通し、その後はゲートの信号を止めてもオンの状態を保ち、電流がほぼゼロまで下がったときに初めてオフになります。トランジスタはベース電流やゲート電圧でオン・オフを自由に切り替えられ、途中の状態で電流の大きさを連続的に制御(増幅)することもできます。サイリスタは非常に大きな電圧・電流に耐えられるため、交流の電力制御や直流送電に使われ、トランジスタは増幅から電源のスイッチングまで幅広く使われます。
比較表
| 観点 | サイリスタ | トランジスタ(BJT・MOSFET・IGBT) |
|---|---|---|
| 構造 | PNPNの4層、端子はアノード・カソード・ゲート | BJTはNPN/PNPの3層、MOSFETは絶縁ゲート構造 |
| オンの仕方 | ゲートにパルス電流を入れる | ベース電流/ゲート電圧をかけ続ける |
| オフの仕方 | 電流が保持電流以下になると自然にオフ(ゲートでは切れない) | ベース電流/ゲート電圧を止めればオフ |
| 連続的な制御(増幅) | できない(オンかオフのみ) | できる |
| 扱える電力 | 非常に大きい(数kV・数kA級) | 小信号から大電力まで(IGBTは数kV級) |
| スイッチング周波数 | 低い(商用周波数の交流制御など) | 高い(kHz〜MHz) |
| 代表的な用途 | 交流の位相制御、直流送電、大型の整流器 | 増幅、電源、インバーター、デジタル回路 |
サイリスタは「一度入ったら切れない」スイッチ
サイリスタはPNPNの4層構造で、内部ではPNPとNPNの2つのトランジスタが互いの電流を増やし合う形になっています。ゲートに小さな電流を流すとこの正のフィードバックが始まり、一気に導通状態になって、ゲートの信号がなくてもオンを保ちます。オフにするには、流れる電流を一定の値(保持電流)より小さくする必要があります。交流では電流が半周期ごとにゼロになるため自然にオフになり、ゲートを入れるタイミングを変えることで、電力を細かく制御できます(位相制御)。
トランジスタは自由に切れる、連続的に制御できる
トランジスタは、ベース電流やゲート電圧によって電流の大きさを連続的に制御でき、信号を増幅することも、スイッチとして使うこともできます。制御の信号を止めればオフになるため、直流の回路でも自由にオン・オフを繰り返せます。電源やモーターの制御に使うインバーターでは、MOSFETやIGBTを数kHz〜数百kHzで高速にオン・オフして、電圧や周波数を自由に作り出しています。
用途のすみ分けと変化
サイリスタは、1つの素子で非常に大きな電圧と電流を扱えるため、直流送電の変換装置や大型の電動機の制御、電解の電源などで今も使われています。交流の調光器などに使われるトライアックも、サイリスタの仲間です。かつては鉄道車両のインバーターなどにも、ゲートでオフにできるGTOサイリスタが使われましたが、高速で制御しやすいIGBTに置き換わりました。電力を細かく速く制御する用途の多くは、現在トランジスタ系のデバイスが担っています。