結論:SiC MOSFETとSi IGBTの違いは?
SiC MOSFETとSi IGBTの最大の違いは「材料とスイッチング周波数」です。SiC MOSFETは炭化ケイ素を使いオン抵抗がSi比で約1/300、スイッチング損失が大幅に低いため100kHz以上の高周波動作が可能で、200°C以上の高温動作にも耐えます。Si IGBTはシリコンベースで通常20kHz以下、動作温度は150〜175°Cが限界ですがコスト面で優位です。Tesla Model 3(2018年)のSiC採用を機にEV駆動系で置き換えが進みました。
比較表
| 観点 | SiC MOSFET | Si IGBT |
|---|---|---|
| 材料 | 炭化ケイ素(SiC) | シリコン(Si) |
| オン抵抗(RDS(on)) | 低い(Si比約1/300) | コレクタ-エミッタ間飽和電圧(VCEsat)として定義 |
| スイッチング損失 | 大幅に低い(高周波動作可能:100kHz以上) | 比較的高い(通常20kHz以下で使用) |
| 最大動作温度 | 200°C以上(高温動作に優位) | 150〜175°C(Siの熱的限界) |
| 耐圧範囲 | 600V〜10kV対応 | 600V〜6.5kV(主流は600V〜1700V) |
| コスト | 高価(SiCウェハ・プロセスコストが高い) | 安価(成熟したSiプロセスで量産) |
| システム効率 | 高い(インバーター効率1〜3%向上) | 低い(損失が大きくヒートシンク大型化が必要) |
| 主な用途 | EV駆動インバーター・OBC・DC-DC・太陽光PCS | 産業用モーター・鉄道・大型空調・UPS・旧来型EV |
EVにおけるSiC MOSFETへの移行
Teslaが2018年にModel 3に初めてSiC MOSFETをメインインバーターに採用したことで、EV業界全体にSiCへの転換が加速しました。SiCインバーターは同一バッテリー容量で走行距離を5〜10%延長できるとされ、高級・中高級EVを中心に採用が拡大しています。BYD・現代自動車・BMW・フォルクスワーゲンもSiCシステムを積極導入しており、Wolfspeed・STMicroelectronics・インフィニオン・ロームがSiCパワーモジュールの主要サプライヤーとして供給を拡大しています。一方でコストの高さが課題で、廉価なコンパクトEVにはIGBTが依然として使われています。
IGBTの強みと残存用途
IGBTはSiCに比べて圧倒的に安価で、製造技術が成熟しています。鉄道車両(新幹線・電気機関車)・大型産業用モーター・無停電電源装置(UPS)・大容量太陽光インバーター(>100kW)では、スイッチング周波数が低く設計できるためIGBTが依然として最適です。また、SiCウェハの供給不足(200mmへの移行遅れ)が続く中、IGBTはコストと供給安定性で優位を保っています。GaNパワーデバイスとの比較はsic-vs-ganを、SiC材料の詳細はsilicon-carbide・sic-mosfetを参照してください。