オーバーレイは多層露光パターン間の位置合わせ誤差。EUV工程では±1nm以下の管理が必要。IBO(顕微鏡像解析)とDBO(回折光位相解析:精度±0.3nm)の測定方式、KLA Tencor・ASML YieldStarによるAPC(自動プロセス制御)ループをわかりやすく解説。
オーバーレイ(Overlay)とは、半導体製造の多層露光プロセスにおいて、異なる工程で形成したパターン層同士の「重なり位置のずれ(位置合わせ誤差)」を指します。例えばゲート層のパターンとコンタクトホール層のパターンが設計通りの位置に正確に重なっているかを示す指標です。オーバーレイ誤差が仕様を超えると、ショート・オープン・トランジスタ特性の異常などのデバイス不良となり、歩留まり低下の主要原因の一つです。
オーバーレイ誤差の発生原因は多岐にわたります。①露光装置のアライメント誤差:露光機がウェハ上の位置合わせマーク(Alignment Mark)を読み取りXYθ補正する際の精度限界。②ウェハの変形・伸縮:前工程(成膜・熱処理・エッチング等)によるウェハの応力変形・膨張・反り(Wafer Distortion)。③レチクル(マスク)の寸法誤差・熱膨張:露光熱によるマスクの微小膨張(MSD:Mask-induced Shift and Distortion)。④露光装置のレンズ収差・フィールド歪み:投影レンズの収差が不均一なパターン変位を生じさせる。これらが複合して発生するため、補正モデルの高精度化が重要です。
オーバーレイの測定方法には主に「IBO(Image-Based Overlay)」と「DBO(Diffraction-Based Overlay)」の2方式があります。IBO(顕微鏡像解析)は従来からの方式でBox-in-BoxやBar-in-BarターゲットのずれをCCDカメラで計測します。DBO(回折光位相解析)は格子ターゲット(SCOL・AIM等)に光を当て回折光の位相差からオーバーレイを算出します。DBOはIBOより精度が高く(≤0.3nmレンジ)、かつターゲットサイズを小さくできるため先端プロセスでの採用が拡大しています。
オーバーレイ制御のフロー:計測装置(KLA Tencor・ASML(YieldStar)・Nova)でウェハ面内の多点計測→統計モデル(スキャナーモデル)でオフセット・スケール・ローテーション成分等を分解→スキャナーの補正パラメータ(オーバーレイコレクション:OVLコレクション)を自動更新するAPC(Advanced Process Control)ループを回します。EUV工程ではパターン1層あたりの許容オーバーレイが±1nm以下に達する場合もあり、計測精度と制御速度の向上が不可欠です。
先端プロセスでのオーバーレイ要求:3nm世代のロジックではCDRU(臨界寸法制御)とオーバーレイが最も難しいプロセス課題の2大指標とされています。EUV×EUVの層間(例:ビア層→メタル層)ではオーバーレイ許容値±1.5nm以下が典型的で、ArFi×EUVの異種露光機間(Inter-Scanner Overlay)の管理も重要です。オーバーレイ計測装置はKLAコーポレーション(Archer/SpectraShape等)が世界トップシェアを持ち、ASML・Nova・Hitachi High-Techが競っています。