反り(Bow・Warp)とは、自由に支持した状態でウェハ全体がどれだけ湾曲しているかを表す指標です。Bowは中心点の基準面からのずれ(符号付きで、凸か凹かが分かる)を、Warpは中面全体の最大変位と最小変位の差(うねりを含む絶対的な変形量)を表します。いずれもウェハを吸着すれば平らに矯正される点で、吸着後も残る平坦度(SFQR)とは性質が異なります。
ウェハ製造の段階では、スライス時のワイヤーのたわみ、ラッピング・研磨での表裏の取り代差、熱処理時の温度分布が反りを生みます。表と裏で加工履歴が非対称になると内部応力のバランスが崩れ、解放されたときに湾曲します。両面研磨(DSP)が使われる理由の一つは、表裏対称に加工することでこの応力差を作らないことにあります。
デバイス工程では、成膜した薄膜の応力が反りの主因になります。膜と基板の熱膨張差や膜自身の内部応力によってウェハが曲がり、その曲率から膜応力を逆算するのがストーニーの式です。3D NANDのように100層以上を積層するプロセスや、厚い金属膜・パワーデバイスの裏面電極では、反り量がミリ単位に達することもあります。
反りが大きいと実務上の問題が次々と起きます。真空チャックやESCでウェハを吸着できない、搬送ロボットがスロットから正しく取り出せない、露光時に無理に矯正することで面内の伸縮(オーバーレイ誤差)が生じる、薄化後のウェハが割れる、といった具合です。特に貼り合わせや薄化を伴う3D実装では、反りの管理が工程成立の前提条件になります。
測定は、静電容量式センサやレーザー干渉計でウェハを3点支持した自由状態のまま形状を取得して行います。対策としては、裏面にも応力を打ち消す膜を成膜する、成膜条件(温度・圧力・RFパワー)で膜応力を調整する、積層順序を工夫して応力をキャンセルする、といった手法が組み合わせて使われます。