スキャナー(Scanner)とは、半導体リソグラフィに用いる露光装置の一種で、レチクル(フォトマスク)とウェハを同期させてスキャン(走査)しながら露光する方式の装置です。1980年代まで主流だった「ステッパー(Stepper)」がウェハを静止させて一括露光するのとは異なり、スキャナーはレチクルとウェハを逆方向に連動移動させながら露光するため、大きな露光フィールド・高スループット・より均一な照明が実現します。現代の前工程リソグラフィ装置はほぼすべてスキャナー方式です。
スキャナーの光源別主要タイプは次のとおりです。①KrFスキャナー(248nm):90nm〜250nmノード主力。②ArFドライスキャナー(193nm):65nm〜130nmノード対応。③ArF液浸スキャナー(193nm、ArFi):20nm〜65nmノードの主役、現在も最先端ファブで多数稼働。④EUVスキャナー(13.5nm):7nm以下ノードに適用。ASMLのみ量産サプライヤー。各光源タイプで開口数(NA)・解像度・スループットの特性が異なり、ファブでは複数タイプを工程別に使い分けます。
スキャナーの主要性能指標としては「解像度(Resolution)」「オーバーレイ精度(Overlay Accuracy)」「スループット(Throughput、WPH:Wafers Per Hour)」「焦点深度(Depth of Focus)」があります。最先端のASML NXT:2100iはスループット305枚/時間(公称)、オーバーレイ±1.0nm、解像度38nmハーフピッチを達成しています。EUVスキャナー(TWINSCAN NXE:3800E)は毎時230枚以上を目標とし、1台あたり数百億円の投資が必要です。
スキャナーの主要サプライヤーはASML(オランダ)・Nikon(日本)・Canon(日本)の3社ですが、EUVスキャナーはASMLの独占です。ArF液浸スキャナー市場でもASMLが80%超のシェアを持ち、NikonとCanonは特定のレガシーノード・特殊用途(FPD、MEMS)向けを中心に展開しています。1台のスキャナーは数万点以上の部品で構成され、レンズ・ステージ・照明系・アライメント系などに高精度サブシステムが凝縮されています。
スキャナーに関連する重要技術として「SMO(Source Mask Optimization)」「計算リソグラフィ(Computational Lithography)」があります。光源形状の最適化(Freeform Illumination)とレチクルOPCを組み合わせ、プロセスウィンドウを最大化します。また、スキャナーとコーター/デベロッパー(Tokyo Electron、TELのACT-12等)をクラスターツール化して搬送時の汚染・環境変動を最小化することが標準的なファブ構成となっています。