最終更新 2026-10-07

液浸露光とは(ArF液浸リソグラフィ)

Immersion Lithography (ArFi)

液浸露光(ArF液浸)とは、投影レンズとウェハの間を空気ではなく純水(屈折率約1.44)で満たし、実効的な露光波長を短縮して解像度を高めるリソグラフィ技術です。ArFの193nmが実効134nm相当となり、開口数(NA)を1.0以上(最大1.35)まで高められます。EUV導入後も、マルチパターニングと組み合わせて幅広いノードで使われています。

目次8項目
  1. 定義・解説
  2. 図解
  3. よくある質問
  4. 設備の製造メーカー
  5. 関連する製品
  6. 関連用語
  7. 比較・違いを学ぶ
  8. 出典・参考資料

定義・解説

液浸露光(Immersion Lithography)とは、投影レンズとウェハの間に空気の代わりに純水(屈折率n≈1.44)を満たすことで、実効的な露光波長を短縮し解像度を高めたリソグラフィ技術です。ArFエキシマレーザー(193nm)を使う「ArF液浸(ArFi)」が主流であり、193nm÷1.44≒134nmの実効波長が得られます。これにより開口数(NA)を1.0以上(最大1.35)に高めることができ、従来のドライArF(NA最大0.93)より大幅に解像度が向上します。

液浸露光は2004年にTSMCとIBMが共同で90nmノードへの適用を発表し、2006年から量産に導入されました。EUV装置が量産に投入される2019年前後まで、65nm→45nm→28nm→20nmへの微細化を支える中核技術として機能しました。現在もEUVが届かない40nm〜130nmのレガシーノードや、EUVとの組み合わせ(ハイブリッド露光)として最先端ファブでも多数稼働しています。

液浸露光単体の解像度限界を超えるために「マルチパターニング」技術が組み合わせて使われます。代表的なものに「LELE(Litho-Etch-Litho-Etch)」「SADP(Self-Aligned Double Patterning)」「SAQP(Self-Aligned Quad Patterning)」があり、10nm世代以降では2〜4回の重ね露光で実質的に解像度を倍増させました。この多重露光によるコスト・工程数の増大がEUV導入の主な動機となりました。

液浸露光装置の主なサプライヤーはASML(NXT:2000i/2050i/2100iシリーズ)、Nikon(NSR-S635E等)、Canon(FPA-8300系)の3社です。ASMLがシェア80%超で市場を主導しており、NikonとCanonは一部のノードや特定用途(ディスプレイパネル・MEMS等)で供給しています。液浸露光装置のスループットはウェハ300枚/時間超が一般的で、EUV装置(100〜200枚/時間)より高い生産性を持ちます。

液浸露光に使われるフォトレジストは「KrFレジスト」「ArFドライレジスト」とは異なる「ArFiレジスト(液浸用)」が必要です。純水との接触による溶出・膨潤を防ぐトップコートや、液浸液の回収・管理システムも装置の重要な構成要素です。将来的にはEUVが主導する最先端ノードでも、液浸ArFはコスト効率の高い補完技術として長期間使われ続けると予測されています。

図解

液浸露光(ArF液浸)の要点(屈折率・液浸フード・トップコート・欠陥)
EUV導入後も、多くの層とマルチパターニングで使われ続けている。

関連するデータ・ツール

データ露光光源の波長一覧(g線〜EUV)計算・換算ツール露光解像度・焦点深度 計算ツール(レーリーの式)

この用語を扱う職種

前工程(ウェハプロセス)リソグラフィエンジニア(露光工程)

よくある質問(FAQ)

液浸露光でなぜ解像度が上がるのですか?
投影レンズとウェハの間を屈折率1.44の純水で満たすと、その媒質中で光の波長が実効的に短くなり(193nm÷1.44≒134nm相当)、同時に開口数(NA)を1.0以上に高められるからです。解像度はR=k₁×λ/NAで決まるため、λが実質的に縮みNAが増える二重の効果で微細化できます。
液浸露光で純水を使うのはなぜですか?
193nmの光をほとんど吸収せず、屈折率が1.44と高く、半導体プロセスで扱い慣れた超純水がすでにファブに整備されているためです。より屈折率の高い液体(高屈折率液浸)も研究されましたが、吸収や汚染の問題から実用化には至りませんでした。
液浸露光特有の欠陥にはどんなものがありますか?
水の気泡(バブル)による転写不良、ウォーターマーク(水滴の跡)、レジスト成分が水に溶け出すリーチング、そして水を介したパーティクル汚染です。これらを抑えるため、レジスト上にトップコートを設けたり、水の供給・回収を精密に制御するノズル設計が使われます。

設備の製造メーカー

この用語に関連する製品

型番は各社の公式製品ページで確認したものです。出典のリンクは各製品ページに載せています。

TWINSCAN NXT:2100iASML・DUV露光装置
NSR-S635Eニコン(Nikon)・DUV露光装置
GT66Aギガフォトン・エキシマレーザー発振器
CLEAN TRACK™ LITHIUS Pro™ V東京エレクトロン(TEL)・コータ/デベロッパ
ScannerTemp™KLA・センサウェハ(T/C付ウェハ)
TWINSCAN NXT:2150iASML・DUV露光装置
NSR-S636Eニコン(Nikon)・DUV露光装置
CLEAN TRACK™ LITHIUS Pro™東京エレクトロン(TEL)・コータ/デベロッパ
TWINSCAN NXT:2050iASML・DUV露光装置
NSR-S625Eニコン(Nikon)・DUV露光装置
TWINSCAN NXT:2000iASML・DUV露光装置
TWINSCAN NXT:1980FiASML・DUV露光装置

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カール・ツァイスSMT(Carl Zeiss SMT)ドイツコーニング・トロペル(Corning Tropel)米国

比較・違いを学ぶ

出典・参考資料

  1. ASML「DUV lithography systems」(2026/10/07 確認)
  2. 東京エレクトロン nanotec museum「半導体用語集:液浸リソグラフィ」(2026/10/07 確認)
  3. ASML「TWINSCAN NXT:2100i 製品ページ」(2026/10/07 確認)
  4. ニコン(Nikon)「NSR-S635E 製品ページ」(2026/10/07 確認)
  5. 東京エレクトロン(TEL)「CLEAN TRACK™ LITHIUS Pro™ V 製品ページ」(2026/10/07 確認)