SiCウェハとは、SiCパワーデバイスを製造するための単結晶炭化ケイ素の基板です。シリコンウェハと違い、SiCは融液から引き上げるチョクラルスキー法が使えず、2000℃を超える高温で昇華させて種結晶上に再結晶させる昇華法(改良レーリー法)で成長させます。
この製法上の制約から、SiCウェハは結晶成長が遅く、口径の拡大にも時間がかかりました。長らく150mm(6インチ)が主流で、200mm(8インチ)への移行がようやく本格化しつつある段階です。シリコンが300mmで量産されているのと比べると、1枚あたりの取れ数の差がそのままコスト差になります。
品質面ではマイクロパイプやベーサル面転位(BPD)といったSiC特有の結晶欠陥が課題です。とくにBPDは通電中に積層欠陥へ拡張してオン抵抗の経時変化を引き起こすため、エピタキシャル成長の段階で欠陥を変換・低減する技術が重要になります。
加工の難しさもコスト要因です。SiCはダイヤモンドに次ぐ硬度を持つため、スライスと研磨に時間がかかり、材料損失も大きくなります。レーザーで内部に改質層を作って薄く剥ぎ取る手法など、切り代を減らす加工技術の開発が進んでいます。供給側では、Wolfspeed、レゾナック、住友電気工業などが主要なプレーヤーです。