マスク誤差増幅係数(MEEF:Mask Error Enhancement Factor)は、フォトマスク上のパターン寸法誤差がウェハ上の転写パターン誤差に拡大される倍率を表す指標です。MEEF=(ウェハCDの変化量)÷(マスクCDの変化量×縮小比)で定義され、理想的なリソグラフィではMEEF=1ですが、実際には光学回折・非線形レジスト応答により1を超えます。
MEEFが重要な理由は、リソグラフィの解像限界近傍では光学系の非線形性が増し、マスクの微小な寸法誤差がウェハ上で増幅されるためです。例えばMEEF=3の場合、マスク上1nmのCD誤差がウェハ上(縮小比4×を考慮すると)0.75nmの誤差になります。先端ノードではパターン許容誤差がこの量に近くなるため、MEEFの管理が歩留まりに直結します。
MEEFはフィーチャーのタイプ(ライン、コンタクト、アシストフィーチャー)、照明条件(NA、σ、照明形状)、マスク材料(クロム、MoSi)、フォーカス条件により異なります。特に孤立パターンや補助フィーチャーはMEEFが高くなる傾向があり、OPC設計・SMOでMEEFを考慮したパターン補正が必要です。
マスク製造の観点では、MEEFが高いパターンほどマスクCD精度の要求が厳しくなります。EUV露光機では縮小比が4×(DUVと同じ)ながらも、光子数が少なく確率論的効果(ストキャスティック効果)の影響でMEEFが実効的に高まるケースがあります。マスク修正(mask repair)の際もMEEFを考慮した修正量の計算が必要です。
MEEFの測定はウェハ上のCD-SEM計測とマスク計測(マスクCD-SEM、ACROSなど)を組み合わせて行います。KLA、Zeiss(マスク検査・計測装置)、ASML(リソグラフィシミュレーター)が提供するツールでMEEFの予測・計測が可能です。MEEFを最小化するプロセス条件の選択(NA・コヒーレンス・フォーカス)もRMS(レシピ管理)の重要項目です。