スピンオンカーボン(SOC:Spin-On Carbon)は、半導体製造のリソグラフィ・エッチングプロセスで使用される有機系ハードマスク材料で、スピンコート(回転塗布)により均一な薄膜を形成できる非晶質カーボン系材料です。CVD(化学気相成長)で成膜するACL(Amorphous Carbon Layer)と同様の機能を持ちながら、スピンコート装置で処理できるため生産性が高く、アスペクト比の大きいトポグラフィへの埋め込み性(ギャップフィル性)に優れています。
SOCの主な用途として、①多層ハードマスクスタックのボトム層(厚いカーボン層として、上層のSiON/レジスト薄膜をサポートしつつエッチングに対する高い耐久性を提供)、②パターン転写の中間層(レジストパターンをSOC→基板の順に転写)、③SADP/SAQPのコア材料(スペーサー形成後に選択除去されるコアとして機能)があります。
SOCの光学特性として、露光波長(DUV:248nm、193nm、EUV:13.5nm)で高い光吸収率(消衰係数kが大きい)を持つことが重要です。これにより下層基板からの反射光を吸収し、BARCとしての機能も兼ねることができます。また、レジストパターニング中のフレアやマスク散乱光吸収にも貢献します。
SOCのエッチング特性として、O2またはSO2/O2プラズマでのアッシング(灰化)除去が可能で、SiO2・SiNに対して高い選択比を持ちます。一方、上層のSiON(ハードマスク)はフルオロカーボン(CF4/CHF3)系ガスでエッチングされるため、SOCとSiONは選択的に加工できます。この選択比の差がマルチパターニングの多段転写を可能にします。
SOCの主要メーカーとして、JSR Corporation(日本)、Merck(Brewer Science:米国)、Shin-Etsu Chemical(信越化学工業)、Samsung SDI(韓国)が市場をリードしています。EUVリソグラフィ向けのEUV対応SOC(EUV光での高吸収・低アウトガス)や、2nm以下プロセス向けのナノコンポジットSOC(カーボン+金属酸化物ハイブリッド)の開発が進んでいます。