EUV確率論的効果(Stochastic Effects)は、EUVリソグラフィ特有の現象で、光子数の統計的揺らぎ・レジスト内の化学反応のランダム性・露光スポットの確率論的ばらつきに起因する、ウェハ上のパターン寸法・形状・欠陥の予測不能なばらつきです。EUVの光子エネルギーは91eVと高く、露光に必要な光子数が少ないため(DUVの1/14程度)、ポアソン統計に従う光子ショットノイズが無視できません。
確率論的効果が引き起こす主な問題は、①LWR(Line Width Roughness:ラインエッジのギザギザ)の増大、②ストキャスティックデフェクト(局所的な橋絡・断線)、③CDU(Critical Dimension Uniformity)の悪化です。特に10nm以下のパターンでは、確率論的デフェクトが歩留まりの主要制限要因となっています。
対策として、①高感度かつLWRの低いEUVレジスト(Metal-oxide resistやMASP)の開発、②露光量(ドーズ)の増加(スループット低下とトレードオフ)、③AIを用いたストキャスティックデフェクト検査(KLAのe-beam検査装置)、④OPC/SMO(ソースマスク最適化)による予防的設計が進められています。
EUV露光機のNA(開口数)を0.55に高めたHigh-NA EUV(ASML EXE:5000シリーズ)では、さらに小さなパターン(8nm以下のハーフピッチ)を形成できますが、確率論的効果はより深刻になります。High-NA対応の新世代レジスト開発がTSMC・Samsung・Intelとレジストメーカー(JSR、住友化学、Inpria)の最重要課題の一つです。
確率論的効果の定量評価には、KLAやApplied Materialsのe-beam検査装置を用いた全面サンプリング検査や、actinic(EUV光そのものを使った)マスク検査が用いられます。確率論的欠陥の確率分布モデリングとシミュレーションによる欠陥予測も研究が進んでいます。