スクラッチとは、CMP工程でウェハ表面に生じる線状の傷です。長さは数μmから数百μm、深さは数nmから数十nmに及び、金属配線層で発生すれば断線やショートを、絶縁膜で発生すれば後続の金属埋め込みによるリークを引き起こすため、CMP固有の致命欠陥として管理されます。
主な原因は異常粒子です。スラリー中の砥粒が凝集して大きな塊になる、パッドやリテーナリングの摩耗片が混入する、前工程の残渣が持ち込まれる、あるいは研磨屑が再凝集する。これらがウェハとパッドの間に挟まって引きずられると、そのまま線状の傷になります。ナノサイズの砥粒そのものではなく、桁違いに大きな異物が犯人であるのが典型です。
スクラッチが出やすいのは、軟らかい材料と脆い材料です。銅配線は軟らかく傷が残りやすく、low-k絶縁膜は多孔質で機械的に弱いため、圧力を上げると傷や剥離が生じます。微細化に伴って許容される傷の寸法も小さくなるため、検査装置の検出感度を上げると今度は膨大なノイズを拾うという難しさもあります。
対策は発生源ごとに分かれます。スラリーは使用直前にポイントオブユースフィルタでろ過し、凝集粒子を捕まえます。供給ラインでは低せん断のポンプを使って砥粒を壊さず運びます。パッドとリングは摩耗を監視して定期交換し、コンディショニング条件も見直します。そして研磨圧力を必要以上に上げないことが基本です。
検出は、研磨後の表面検査装置(ダークフィールドの光学検査やeビーム検査)で行います。スクラッチは同心円状や放射状といった特徴的な形状で現れることが多く、その向きと位置から発生源を推定できます。傷は一度発生すると救済できないため、CMPでは事後検出よりも発生源の管理が重視されます。