酸化膜CMPとは、SiO₂系の絶縁膜を研磨対象とするCMP工程です。素子分離のSTI形成後に余剰酸化膜を削るSTI-CMPと、多層配線の層間絶縁膜を平坦化するILD-CMPが代表で、半導体製造で最初に実用化されたCMP用途でもあります。
STI-CMPでは、トレンチを埋めるために全面に成膜した酸化膜のうち、トレンチ外の部分を削り落とします。ここで重要になるのがストッパ膜です。あらかじめ活性領域の上に窒化膜(SiN)を残しておき、酸化膜だけを高い選択比で削るスラリーを使うことで、SiNが露出した時点で研磨が実質的に止まり、削りすぎを防げます。この選択比を担うのがセリア(CeO₂)系スラリーです。
セリアが使われるのは、シリカ砥粒に比べてSiO₂に対する化学的な反応性が高く、低い圧力でも高いレートが得られるうえ、SiNとの選択比を薬剤で大きく取れるためです。研磨圧を下げられることは、パターン密度依存の凹凸(ディッシング・エロージョン)を抑えるうえでも有利に働きます。一方、セリア粒子は凝集しやすく、スクラッチと残留粒子の管理がシビアになります。
ILD-CMPでは、配線層の上に成膜した絶縁膜の段差をなくして、次の層のリソグラフィが焦点を合わせられる平坦面を作ります。ストッパ膜が使えないため、研磨時間と実測膜厚によるフィードバック制御(APC)で狙いの残膜を出します。研磨レートのドリフトが直接膜厚ばらつきになるため、パッドコンディショニングとレート管理が品質を左右します。
酸化膜CMPに共通する課題は、パターン密度への依存です。同じ条件で研磨しても、疎な領域と密な領域では削れ方が異なり、チップ内で段差が残ります。これを避けるため、設計段階でダミーパターンを挿入してパターン密度を平準化するという、レイアウト側からの対策が併用されます。