エピタキシャルウェハ(エピウェハ)とは、鏡面研磨したシリコンウェハの上に、気相成長で単結晶シリコン層(エピタキシャル層)を数μm〜数十μm成長させたウェハです。基板と成長層で不純物濃度・導電型を独立に設計できるため、「電気的に最適な表層」と「機械的・ゲッタリング的に最適な基板」を1枚のウェハで両立できます。
エピウェハが選ばれる理由は主に3つです。①表層の結晶品質:基板側のCOP(結晶起因欠陥)をエピ層が覆い隠すため、ゲート絶縁膜の耐圧(GOI)が向上します。②濃度プロファイルの自由度:低抵抗のp+基板の上に高抵抗のp-層を成長させることで、ラッチアップ耐性と素子特性を両立できます。③酸素・不純物の制御:エピ層はCZ結晶と違って酸素をほとんど含みません。
成長は枚葉式のエピタキシャル成長装置で行われます。水素雰囲気中で1,000〜1,150℃に加熱し、トリクロロシラン(SiHCl₃)などのシリコン源ガスを供給して、基板の結晶方位を引き継いだ単結晶層を堆積させます。ドーパントガスを同時に流すことで、成長中に抵抗率を制御します。成長前には水素ベークで自然酸化膜を除去し、清浄な下地を作ることが不可欠です。
パワー半導体では、エピウェハの重要性がさらに高まります。縦型パワーMOSFETやIGBTの耐圧は、ドリフト層の厚みと濃度で決まるため、エピ層の膜厚均一性と抵抗率均一性がそのままデバイス特性のばらつきになります。SiCデバイスでは、基板のベーサル面転位(BPD)をエピ成長段階で刃状転位へ変換して低減する技術が、信頼性確保の要になっています。
課題はコストと欠陥です。エピ成長は1枚ずつの処理で時間がかかり、ポリッシュドウェハに対する価格上乗せは小さくありません。また、下地の汚染やパーティクルが起点となってスタッキングフォルト(積層欠陥)やエピスパイクといった固有の欠陥が生じます。装置はApplied Materials・ASM International・東京エレクトロンなどが供給しています。