アニールウェハとは、鏡面研磨後のシリコンウェハを水素またはアルゴン雰囲気中で1,200℃前後の高温熱処理し、表層のCOP(結晶起因欠陥)を消滅させて無欠陥層を作ったウェハです。エピタキシャルウェハより安価に表層品質を高められる選択肢として、DRAMなどのメモリ向けに広く使われてきました。
原理は、高温で表面のシリコン原子が拡散・再配列することにあります。表層近くの八面体ボイド(COP)は内壁の酸化膜が溶解したあと、原子の移動によって埋められ、深さ1〜数μmの範囲で欠陥のない層が形成されます。同時に表面の自然酸化膜も還元・除去され、原子レベルで平坦な表面が得られます。
水素アニールとアルゴンアニールでは特性が異なります。水素は還元性が強く表面をより清浄にできますが、可燃性ガスであるため設備の安全対策が必要です。アルゴンは不活性で扱いやすく、表層の酸素を外方拡散させてデヌーデッドゾーンを形成しやすい一方、表面の平坦化効果は水素に劣ります。用途に応じて使い分けられます。
アニールウェハの位置づけは、ポリッシュドウェハとエピウェハの中間です。ポリッシュドウェハはCOPを含み、エピウェハは表層が完全な単結晶ですが高コストです。アニールウェハは、表層のCOPを消しつつエピ成長のコストを避けられるため、ゲート絶縁膜の耐圧(GOI)が重要でありながらコスト制約も厳しいメモリ用途に適合しました。
ただし、無欠陥結晶(V/G制御で育てたパーフェクトクリスタル)の量産技術が確立したことで、そもそもCOPの少ないウェハを直接供給できるようになり、アニールウェハの相対的な位置づけは変化しています。それでも、内部にはゲッタリング用のBMDを残しつつ表層だけを無欠陥化できるという構造上の利点は残っています。