最終更新 2026-10-10

格子間酸素とは(Oi)

Interstitial Oxygen

格子間酸素(Oi)とは、CZ法のシリコン結晶中に格子の隙間として取り込まれた酸素で、石英ルツボの溶解により10〜18ppma程度が不可避的に混入します。熱処理で析出したBMDが金属不純物を捕まえるゲッタリングサイトになり、転位のピン止めでウェハ強度も高めます。一方でサーマルドナー生成や接合リークの害もあるため、用途ごとに最適濃度が異なる設計パラメータです。

目次7項目
  1. 定義・解説
  2. 図解
  3. よくある質問
  4. 設備の製造メーカー
  5. 関連用語
  6. 比較・違いを学ぶ
  7. 出典・参考資料

定義・解説

格子間酸素(Oi:Interstitial Oxygen)とは、CZ法で育てたシリコン結晶中に、格子の隙間に取り込まれた形で存在する酸素原子のことです。石英(SiO₂)ルツボが融液に溶けることで不可避的に混入し、典型的な濃度は10〜18ppma(約5×10¹⁷〜9×10¹⁷atoms/cm³)です。ルツボを使わないFZ法の結晶には、この酸素がほとんど含まれません。

酸素は不純物でありながら、シリコンウェハにとって有益な働きをします。熱処理によって酸素が析出してBMD(Bulk Micro Defect:バルク微小欠陥)を形成すると、それが鉄・銅などの金属不純物を捕獲するゲッタリングサイトとして機能します(イントリンシックゲッタリング)。さらに、格子間酸素は転位の移動を妨げるピン止め効果を持ち、ウェハの機械的強度を高めて熱処理時のスリップ転位を抑えます。

一方で、酸素は害にもなります。低温熱処理で酸素が電気的に活性なサーマルドナーを形成すると、狙った抵抗率がずれてしまいます。また、デバイスが作られる表面付近にBMDが存在すると、接合リークの原因になります。このため、表面付近の酸素を外方拡散させて無欠陥層(デヌーデッドゾーン)を作り、内部にだけBMDを残すという熱処理設計が行われます。

つまり酸素濃度は「多ければ良い/少なければ良い」という指標ではなく、デバイスの種類に応じて最適値が異なる設計パラメータです。ロジック・メモリではゲッタリング能力と強度のバランスを取った中程度の濃度が、パワーデバイスや放射線検出器のように少数キャリア寿命を最優先する用途では、酸素をほぼ含まないFZウェハが選ばれます。

結晶成長時の酸素濃度は、ルツボの回転速度・結晶の回転速度・炉内圧力・アルゴン流量などで制御されます。特に効果的なのが磁場印加CZ法(MCZ)で、融液に磁場をかけて対流を抑えることで、ルツボからの酸素溶出を減らし、軸方向・径方向の濃度分布も均一化できます。測定にはFT-IR(赤外分光)が標準的に使われます。

図解

シリコン中の格子間酸素(Oi)の良い面と悪い面の比較
用途ごとに最適な濃度が違い、ウェハの設計パラメータになる。

関連するデータ・ツール

計算・換算ツールシリコン中の酸素濃度(Oi)換算ツール

この用語を扱う職種

装置・材料メーカー単結晶成長エンジニア(シリコン・SiC)

よくある質問(FAQ)

酸素は不純物なのに、なぜ入っていた方がよいのですか?
熱処理で酸素が析出してできるBMD(バルク微小欠陥)が、鉄や銅などの金属不純物を捕獲するゲッタリングサイトとして働くからです。さらに格子間酸素は転位の移動を妨げるため、熱処理時のスリップを抑えてウェハの機械的強度を高めます。
FZウェハに酸素が少ないのはなぜですか?
FZ法は石英ルツボを使わず、多結晶シリコン棒を局所的に溶かして単結晶化するためです。酸素の供給源であるルツボに触れないので、酸素濃度が桁違いに低くなり、少数キャリア寿命が長く高抵抗率の結晶が得られます。パワーデバイスや放射線検出器に適します。
デヌーデッドゾーンとは何ですか?
ウェハ表面付近の酸素を熱処理で外方拡散させ、BMDが形成されない無欠陥層にした領域のことです。トランジスタが作られる表層は清浄に保ちつつ、内部にはゲッタリング用のBMDを残すという、酸素濃度と熱履歴の設計によって作られます。

設備の製造メーカー

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出典・参考資料

  1. 応用物理学会「シリコンウェーハのゲッタリング技術の進展(応用物理 84巻7号)」(2026/10/10 確認)