格子間酸素(Oi:Interstitial Oxygen)とは、CZ法で育てたシリコン結晶中に、格子の隙間に取り込まれた形で存在する酸素原子のことです。石英(SiO₂)ルツボが融液に溶けることで不可避的に混入し、典型的な濃度は10〜18ppma(約5×10¹⁷〜9×10¹⁷atoms/cm³)です。ルツボを使わないFZ法の結晶には、この酸素がほとんど含まれません。
酸素は不純物でありながら、シリコンウェハにとって有益な働きをします。熱処理によって酸素が析出してBMD(Bulk Micro Defect:バルク微小欠陥)を形成すると、それが鉄・銅などの金属不純物を捕獲するゲッタリングサイトとして機能します(イントリンシックゲッタリング)。さらに、格子間酸素は転位の移動を妨げるピン止め効果を持ち、ウェハの機械的強度を高めて熱処理時のスリップ転位を抑えます。
一方で、酸素は害にもなります。低温熱処理で酸素が電気的に活性なサーマルドナーを形成すると、狙った抵抗率がずれてしまいます。また、デバイスが作られる表面付近にBMDが存在すると、接合リークの原因になります。このため、表面付近の酸素を外方拡散させて無欠陥層(デヌーデッドゾーン)を作り、内部にだけBMDを残すという熱処理設計が行われます。
つまり酸素濃度は「多ければ良い/少なければ良い」という指標ではなく、デバイスの種類に応じて最適値が異なる設計パラメータです。ロジック・メモリではゲッタリング能力と強度のバランスを取った中程度の濃度が、パワーデバイスや放射線検出器のように少数キャリア寿命を最優先する用途では、酸素をほぼ含まないFZウェハが選ばれます。
結晶成長時の酸素濃度は、ルツボの回転速度・結晶の回転速度・炉内圧力・アルゴン流量などで制御されます。特に効果的なのが磁場印加CZ法(MCZ)で、融液に磁場をかけて対流を抑えることで、ルツボからの酸素溶出を減らし、軸方向・径方向の濃度分布も均一化できます。測定にはFT-IR(赤外分光)が標準的に使われます。