サファイア基板とは、単結晶アルミナ(α-Al₂O₃)を加工した基板で、GaN系青色LEDの成長基板として最も広く使われてきた材料です。GaN自立基板が高価で入手困難だった時代に、格子不整合を抱えながらもGaNを成長させられる実用的な選択肢として量産を支え、白色LED産業の基盤となりました。
製造は、キロラムスキー法(Kyropoulos法)やEFG法、ヒートエクスチェンジャー法などで大型の単結晶ブールを育成し、それをコアドリルで円筒状に抜き、ワイヤーソーでスライスしてからラッピング・研磨で仕上げます。モース硬度9という極めて硬い材料のため、切断・研磨には時間とダイヤモンド砥粒が必要で、加工コストが価格の大きな部分を占めます。
GaN成長基板としての課題は、格子定数差(約16%)と熱膨張差、そして低い熱伝導率です。低温バッファ層(低温GaNまたはAlN)を挟むELO(横方向成長)などの技術で転位密度を下げて実用化されましたが、放熱性の悪さは高出力デバイスでの制約になります。また絶縁体であるため、電極を上面に取り出す横型構造が必要になります。
表面には、成長するGaNの品質を上げるための微細加工が施されるのが一般的です。PSS(Patterned Sapphire Substrate:パターンドサファイア基板)は、表面に数μmの錐状パターンを形成して転位を横方向に曲げ、同時に光の取り出し効率を高める技術で、現在のLED用サファイア基板の標準になっています。
近年は、GaN-on-SiやGaN自立基板、SiC基板との競合が進み、用途ごとの棲み分けが明確になってきました。それでも、コストと成熟度の面で一般照明・バックライト向けLEDではサファイアが主力を維持しており、マイクロLED向けの新たな需要も生まれています。基板からLEDまで一貫生産する日亜化学工業などが代表的なプレイヤーです。