GaN-on-Si(シリコン上GaN)とは、安価で大口径なシリコン基板の上にGaN(窒化ガリウム)層をヘテロエピタキシャル成長させた基板技術です。GaN自立基板やSiC基板の高コストを回避しつつ、既存のシリコン製造ラインの装置と口径(150mm・200mm)をそのまま使えるため、パワーデバイスとRFデバイスのコスト低減を狙う本命の方式とされています。
技術的な難所は、GaNとシリコンの物性差です。格子定数の差は約17%、熱膨張係数の差は約54%あり、そのまま成長させると転位が大量に発生し、降温時の引張応力でクラックが入ります。これを避けるため、AlN核生成層の上にAl組成を段階的に変える傾斜バッファ層や、超格子バッファを挿入して応力と転位を制御する、複雑な多層構造が使われます。
もう一つの課題がメルトバック・エッチングです。GaやAlは高温でシリコンと合金化してしまうため、成長初期にシリコン表面が露出しているとそこから激しく侵食されます。このため、最初にシリコンと反応しないAlNを均一に被覆することが成長の前提条件になります。成長装置にはMOCVDが使われ、AIXTRON・Veecoが主要サプライヤーです。
デバイス用途としては、まずGaN HEMTによる高周波・高効率のパワースイッチが挙げられます。急速充電器やデータセンター電源などの中低耐圧(650V以下)領域では、GaN-on-SiのHEMTがシリコンMOSFETを置き換えつつあります。加えて、マイクロLEDやRFフロントエンド向けの応用も進んでいます。
SiC基板上のGaN(GaN-on-SiC)と比べると、熱伝導率で劣るため高出力RF用途では依然SiCが有利ですが、コストと口径では圧倒的にシリコンが優位です。また、成長後にシリコン基板を除去して素子層だけを転写する手法も研究されており、基板の選択はコスト・放熱・口径のトレードオフで決まります。