最終更新 2026-10-10

GaN-on-Siとは(シリコン上GaN)

GaN-on-Silicon

GaN-on-Siとは、安価で大口径なシリコン基板上にGaN層をヘテロエピタキシャル成長させた基板技術です。格子定数差17%・熱膨張差54%という物性差があるため、AlN核生成層と傾斜バッファ層で応力と転位を制御します。650V以下の急速充電器・データセンター電源向けGaN HEMTで、既存のシリコンラインをそのまま使えるコスト優位性が武器になります。

目次8項目
  1. 定義・解説
  2. 図解
  3. 紛らわしい言葉の切り分け
  4. よくある質問
  5. 設備の製造メーカー
  6. 関連用語
  7. 比較・違いを学ぶ
  8. 出典・参考資料

定義・解説

GaN-on-Si(シリコン上GaN)とは、安価で大口径なシリコン基板の上にGaN(窒化ガリウム)層をヘテロエピタキシャル成長させた基板技術です。GaN自立基板やSiC基板の高コストを回避しつつ、既存のシリコン製造ラインの装置と口径(150mm・200mm)をそのまま使えるため、パワーデバイスとRFデバイスのコスト低減を狙う本命の方式とされています。

技術的な難所は、GaNとシリコンの物性差です。格子定数の差は約17%、熱膨張係数の差は約54%あり、そのまま成長させると転位が大量に発生し、降温時の引張応力でクラックが入ります。これを避けるため、AlN核生成層の上にAl組成を段階的に変える傾斜バッファ層や、超格子バッファを挿入して応力と転位を制御する、複雑な多層構造が使われます。

もう一つの課題がメルトバック・エッチングです。GaやAlは高温でシリコンと合金化してしまうため、成長初期にシリコン表面が露出しているとそこから激しく侵食されます。このため、最初にシリコンと反応しないAlNを均一に被覆することが成長の前提条件になります。成長装置にはMOCVDが使われ、AIXTRON・Veecoが主要サプライヤーです。

デバイス用途としては、まずGaN HEMTによる高周波・高効率のパワースイッチが挙げられます。急速充電器やデータセンター電源などの中低耐圧(650V以下)領域では、GaN-on-SiのHEMTがシリコンMOSFETを置き換えつつあります。加えて、マイクロLEDやRFフロントエンド向けの応用も進んでいます。

SiC基板上のGaN(GaN-on-SiC)と比べると、熱伝導率で劣るため高出力RF用途では依然SiCが有利ですが、コストと口径では圧倒的にシリコンが優位です。また、成長後にシリコン基板を除去して素子層だけを転写する手法も研究されており、基板の選択はコスト・放熱・口径のトレードオフで決まります。

図解

GaN-on-Si(シリコン上GaN)の層構造(AlGaN・GaN・バッファ・AlN・Si基板)
650V以下の急速充電器・データセンター電源向けのGaN HEMTで使われる。

紛らわしい言葉の切り分け

GaN-on-SiとGaN-on-SiC。違いはコストと放熱のどちらを取るかです。GaN-on-Siは安いシリコン基板を使い、大口径化と既存ラインの流用ができるため、パワーデバイスや民生用途に向きます。GaN-on-SiCは高価ですが熱をよく逃がすため、基地局などの高出力RFアンプで主流です。 比較記事 →

関連するデータ・ツール

計算・換算ツール格子不整合・臨界膜厚 計算ツール

この用語を扱う職種

前工程(ウェハプロセス)エピタキシャル成長エンジニア設計・デバイス開発化合物半導体エンジニア

よくある質問(FAQ)

GaNをシリコン上に成長させるのが難しいのはなぜですか?
格子定数の差が約17%、熱膨張係数の差が約54%あるためです。そのまま成長させると転位が大量に発生し、降温時の引張応力でクラックが入ります。AlN核生成層の上にAl組成を段階的に変える傾斜バッファ層や超格子バッファを挿入して制御します。
メルトバック・エッチングとは何ですか?
GaやAlが高温でシリコンと合金化し、シリコン表面を激しく侵食してしまう現象です。成長初期にシリコンが露出していると起こるため、まずシリコンと反応しないAlNを均一に被覆することが成長の前提条件になります。
GaN-on-SiとGaN-on-SiCはどう使い分けますか?
熱伝導率で優れるSiC基板は高出力のRFデバイスに向き、コストと口径で優れるシリコン基板は650V以下のパワースイッチや民生向けに向きます。既存のシリコンラインをそのまま使えることが、GaN-on-Siの最大の経済的利点です。

設備の製造メーカー

関連する装置カテゴリ

同じトピックの用語

化合物基板(SiC・GaN・サファイア) のトピックで関連する用語です。

同じトピックの企業

Wolfspeed米国レゾナック(旧昭和電工)日本SK Siltron韓国日亜化学工業日本Revasum米国PVA TePlaドイツ

比較・違いを学ぶ

出典・参考資料

  1. 特許庁「令和3年度 特許出願技術動向調査 ―GaNパワーデバイス―」(2026/10/10 確認)