GLOSSARY

PVT法(昇華法)とは

PVT (Physical Vapor Transport) Method
最終更新:2026-08-17化合物半導体基板製造装置(SiC/GaN)単結晶製造装置(CZ/FZ引上げ)

PVT法(昇華法)とは?

PVT法(昇華法)とは、原料を2,000℃超で昇華させ、温度差で輸送した蒸気を種結晶上で再結晶させる結晶成長技術です。融液から引き上げられないSiCやAlNに使われます。成長速度は毎時0.1〜1mm程度と遅く、インゴット長も数十mmにとどまるため、1本から取れる枚数の少なさがSiC基板がシリコンウェハより一桁高価な最大の理由です。

定義・解説

PVT法(Physical Vapor Transport:物理気相輸送法、昇華法、改良レーリー法)とは、原料を高温で昇華させ、温度差によって輸送した蒸気を種結晶上で再結晶させて単結晶を育てる結晶成長技術です。SiC(炭化ケイ素)やAlN(窒化アルミ)のように、常圧では液体状態を持たない、あるいは融点が極端に高い材料に使われます。

SiCの場合、坩堝の下部にSiC粉末原料を、上部に種結晶を配置し、全体を2,000〜2,500℃に加熱します。原料側をわずかに高温、種結晶側をやや低温にすることで、昇華したSi・Si₂C・SiC₂などの気体種が温度勾配に沿って上昇し、種結晶の表面で過飽和となって結晶として析出します。成長速度は毎時0.1〜1mm程度と非常に遅く、1本のインゴットに数日を要します。

シリコンのCZ法と比べたときの決定的な違いは、成長が遅く、インゴットが短いことです。CZ法が2m級のインゴットを数十時間で引き上げるのに対し、PVT法のSiCインゴットは長さ数十mmにとどまります。1本から取れるウェハ枚数が桁違いに少ないことが、SiC基板がシリコンウェハより一桁以上高価な最大の理由です。

品質面の課題は、SiC特有の結晶欠陥です。かつては貫通孔状のマイクロパイプが致命的欠陥として問題でしたが、成長条件の改善によりほぼ解消されました。現在の主要課題はベーサル面転位(BPD)で、通電中に積層欠陥へ拡張してオン抵抗を経時的に上昇させるため、エピタキシャル成長の段階でBPDを刃状転位へ変換する技術と組み合わせて低減が図られます。ポリタイプ(4H/6H)の混在を防ぐ温度・圧力制御も重要です。

近年は、より高速な溶液成長法(Top Seeded Solution Growth)や高温CVD法も研究されていますが、量産の主流は依然としてPVT法です。装置はPVA TePlaなどが供給し、基板メーカーはWolfspeed・Coherent・SK Siltron・Resonac・住友電工などが競合しています。8インチ(200mm)化が進行中で、口径拡大がSiCデバイスのコスト低減の鍵となっています。

よくある質問(FAQ)

SiCはなぜCZ法で作れないのですか?
SiCは常圧では液体状態を持たず、加熱すると融解せずに昇華してしまうためです。融液から引き上げるCZ法が原理的に使えないため、昇華した蒸気を温度差で輸送して種結晶上に再結晶させるPVT法(昇華法)が使われます。
SiC基板がシリコンウェハより高価なのはなぜですか?
成長速度が毎時0.1〜1mm程度と遅く、インゴットの長さも数十mmにとどまるため、1本から取れるウェハ枚数がシリコンと桁違いに少ないからです。加えてダイヤモンドに次ぐ硬度のため切断・研磨にも時間と材料ロスがかかります。
ベーサル面転位(BPD)はなぜ問題なのですか?
通電中にBPDが積層欠陥へ拡張し、オン抵抗が時間とともに上昇する(バイポーラ劣化)ためです。基板側で完全に無くすことは難しいため、エピタキシャル成長の段階でBPDを害の少ない刃状転位へ変換する技術と組み合わせて低減します。

設備の製造メーカー

Wolfspeed米国

SiC(炭化ケイ素)パワーデバイスの世界最大手メーカー。EV・太陽光・産業用インバーター向けSiC MOSFE…

企業詳細を見る →
コヒレント(Coherent Corp.)米国

化合物半導体基板(SiC・GaAs)・レーザー光学部品を手掛けるグローバル大手メーカー。2022年にII-VI…

企業詳細を見る →
レゾナック(旧昭和電工)日本

2023年に昭和電工と日立化成が統合して発足した半導体材料の総合メーカー。CMPスラリー・半導体封止材・エピタ…

企業詳細を見る →
住友電気工業(SiC・化合物半導体)日本

電線・光ファイバを主事業に持つ住友電工の化合物半導体部門。SiCウェハ・GaAs・InP基板などパワーデバイス…

企業詳細を見る →
PVA TePlaドイツ

結晶成長装置と超音波検査装置のドイツ系メーカー。シリコンのCZ引き上げ炉、SiC・AlNのPVT(昇華)成長炉…

企業詳細を見る →
SK Siltron韓国

SKグループ傘下の韓国シリコンウェハメーカー。300mmポリッシュド/エピタキシャルウェハを主力とし、米国事業…

企業詳細を見る →

関連カテゴリ

化合物半導体基板製造装置(SiC/GaN)
単結晶製造装置(CZ/FZ引上げ)
ウエハ製造装置

関連用語

SiCウェハ(炭化ケイ素基板)とは →種結晶(シードクリスタル)とは →SiC(炭化シリコン)とは →チョクラルスキー法(CZ法)とは →エピタキシャルウェハ(エピウェハ)とは →GaN-on-Si(シリコン上GaN)とは →ワイドバンドギャップ半導体とは →

同じトピックの用語

化合物基板(SiC・GaN・サファイア) のトピックで関連する用語です。

サファイア基板とは →レーザースライシングとは →化合物半導体とは →GaN(窒化ガリウム)とは →

同じトピックの企業

AIXTRONドイツVeeco Instruments米国日亜化学工業日本Revasum米国

比較・違いを学ぶ

GaN-on-SiとGaN-on-SiCの違い
GaNは自立基板が高価で入手性も限られるため、実用デバイスの多くは異種基板の上にGaN層をヘテロエピタキシャル成長させて作られます。その基板として競合するのがシ
SiCとGaN パワー半導体の違い
SiC(炭化ケイ素)とGaN(窒化ガリウム)はともにシリコンを超えるワイドバンドギャップ半導体ですが、得意な電圧域・周波数帯・用途が異なります。SiCは高耐圧・
← 用語集に戻る