最終更新 2026-10-10

PVT法とは(昇華法)

PVT (Physical Vapor Transport) Method

PVT法(昇華法)とは、原料を2,000℃超で昇華させ、温度差で輸送した蒸気を種結晶上で再結晶させる結晶成長技術です。融液から引き上げられないSiCやAlNに使われます。成長速度は毎時0.1〜1mm程度と遅く、インゴット長も数十mmにとどまるため、1本から取れる枚数の少なさがSiC基板がシリコンウェハより一桁高価な最大の理由です。

目次7項目
  1. 定義・解説
  2. 図解
  3. よくある質問
  4. 設備の製造メーカー
  5. 関連用語
  6. 比較・違いを学ぶ
  7. 出典・参考資料

定義・解説

PVT法(Physical Vapor Transport:物理気相輸送法、昇華法、改良レーリー法)とは、原料を高温で昇華させ、温度差によって輸送した蒸気を種結晶上で再結晶させて単結晶を育てる結晶成長技術です。SiC(炭化ケイ素)やAlN(窒化アルミ)のように、常圧では液体状態を持たない、あるいは融点が極端に高い材料に使われます。

SiCの場合、坩堝の下部にSiC粉末原料を、上部に種結晶を配置し、全体を2,000〜2,500℃に加熱します。原料側をわずかに高温、種結晶側をやや低温にすることで、昇華したSi・Si₂C・SiC₂などの気体種が温度勾配に沿って上昇し、種結晶の表面で過飽和となって結晶として析出します。成長速度は毎時0.1〜1mm程度と非常に遅く、1本のインゴットに数日を要します。

シリコンのCZ法と比べたときの決定的な違いは、成長が遅く、インゴットが短いことです。CZ法が2m級のインゴットを数十時間で引き上げるのに対し、PVT法のSiCインゴットは長さ数十mmにとどまります。1本から取れるウェハ枚数が桁違いに少ないことが、SiC基板がシリコンウェハより一桁以上高価な最大の理由です。

品質面の課題は、SiC特有の結晶欠陥です。かつては貫通孔状のマイクロパイプが致命的欠陥として問題でしたが、成長条件の改善によりほぼ解消されました。現在の主要課題はベーサル面転位(BPD)で、通電中に積層欠陥へ拡張してオン抵抗を経時的に上昇させるため、エピタキシャル成長の段階でBPDを刃状転位へ変換する技術と組み合わせて低減が図られます。ポリタイプ(4H/6H)の混在を防ぐ温度・圧力制御も重要です。

近年は、より高速な溶液成長法(Top Seeded Solution Growth)や高温CVD法も研究されていますが、量産の主流は依然としてPVT法です。装置はPVA TePlaなどが供給し、基板メーカーはWolfspeed・Coherent・SK Siltron・Resonac・住友電工などが競合しています。8インチ(200mm)化が進行中で、口径拡大がSiCデバイスのコスト低減の鍵となっています。

図解

PVT法(昇華法)によるSiC単結晶の成長の流れ
SiCやAlNは融液から引き上げられないため、この方法で作る。

この用語を扱う職種

装置・材料メーカー単結晶成長エンジニア(シリコン・SiC)

よくある質問(FAQ)

SiCはなぜCZ法で作れないのですか?
SiCは常圧では液体状態を持たず、加熱すると融解せずに昇華してしまうためです。融液から引き上げるCZ法が原理的に使えないため、昇華した蒸気を温度差で輸送して種結晶上に再結晶させるPVT法(昇華法)が使われます。
SiC基板がシリコンウェハより高価なのはなぜですか?
成長速度が毎時0.1〜1mm程度と遅く、インゴットの長さも数十mmにとどまるため、1本から取れるウェハ枚数がシリコンと桁違いに少ないからです。加えてダイヤモンドに次ぐ硬度のため切断・研磨にも時間と材料ロスがかかります。
ベーサル面転位(BPD)はなぜ問題なのですか?
通電中にBPDが積層欠陥へ拡張し、オン抵抗が時間とともに上昇する(バイポーラ劣化)ためです。基板側で完全に無くすことは難しいため、エピタキシャル成長の段階でBPDを害の少ない刃状転位へ変換する技術と組み合わせて低減します。

設備の製造メーカー

関連する装置カテゴリ

同じトピックの用語

化合物基板(SiC・GaN・サファイア) のトピックで関連する用語です。

同じトピックの企業

AIXTRONドイツVeeco Instruments米国日亜化学工業日本Revasum米国JX金属(JX Advanced Metals)日本

比較・違いを学ぶ

出典・参考資料

  1. 応用物理学会「昇華法によるSiCバルク単結晶成長 SiC結晶成長技術の現状と課題(応用物理 70巻5号)」(2026/10/10 確認)