PVT法(Physical Vapor Transport:物理気相輸送法、昇華法、改良レーリー法)とは、原料を高温で昇華させ、温度差によって輸送した蒸気を種結晶上で再結晶させて単結晶を育てる結晶成長技術です。SiC(炭化ケイ素)やAlN(窒化アルミ)のように、常圧では液体状態を持たない、あるいは融点が極端に高い材料に使われます。
SiCの場合、坩堝の下部にSiC粉末原料を、上部に種結晶を配置し、全体を2,000〜2,500℃に加熱します。原料側をわずかに高温、種結晶側をやや低温にすることで、昇華したSi・Si₂C・SiC₂などの気体種が温度勾配に沿って上昇し、種結晶の表面で過飽和となって結晶として析出します。成長速度は毎時0.1〜1mm程度と非常に遅く、1本のインゴットに数日を要します。
シリコンのCZ法と比べたときの決定的な違いは、成長が遅く、インゴットが短いことです。CZ法が2m級のインゴットを数十時間で引き上げるのに対し、PVT法のSiCインゴットは長さ数十mmにとどまります。1本から取れるウェハ枚数が桁違いに少ないことが、SiC基板がシリコンウェハより一桁以上高価な最大の理由です。
品質面の課題は、SiC特有の結晶欠陥です。かつては貫通孔状のマイクロパイプが致命的欠陥として問題でしたが、成長条件の改善によりほぼ解消されました。現在の主要課題はベーサル面転位(BPD)で、通電中に積層欠陥へ拡張してオン抵抗を経時的に上昇させるため、エピタキシャル成長の段階でBPDを刃状転位へ変換する技術と組み合わせて低減が図られます。ポリタイプ(4H/6H)の混在を防ぐ温度・圧力制御も重要です。
近年は、より高速な溶液成長法(Top Seeded Solution Growth)や高温CVD法も研究されていますが、量産の主流は依然としてPVT法です。装置はPVA TePlaなどが供給し、基板メーカーはWolfspeed・Coherent・SK Siltron・Resonac・住友電工などが競合しています。8インチ(200mm)化が進行中で、口径拡大がSiCデバイスのコスト低減の鍵となっています。