EOT(Equivalent Oxide Thickness:等価酸化膜厚)とは、ゲート絶縁膜の電気的厚さをSiO₂換算で表した指標です。計算式はEOT = t_high-k × (ε_SiO₂ / ε_high-k)で表され、物理膜厚が同じならば比誘電率(k値)が高いほどEOTは小さくなります。MOSFETのゲート容量(Cox = ε₀ε_SiO₂/EOT)を最大化しながらリーク電流を抑制するための核心指標として、ゲートスタック設計の中心的な設計パラメータです。
SiO₂(k≈3.9)を1nm以下に薄くするとトンネルリーク電流が急激に増加します。HfO₂(k≈22)を使うと、EOT=1nmを達成するために必要な物理膜厚はSiO₂なら1nmのところ、HfO₂では約5.6nm(=1nm × 22/3.9)で実現できます。この物理的余裕がリーク電流を数桁抑制することを可能にします。ただし実際のEOTはHfO₂単体だけでなく、Si基板との界面に形成される極薄SiON界面層(~1nm)のEOTも加算されるため、界面層の管理がEOTミニマイゼーションの鍵です。
先端ロジックノードでのEOTトレンドは、45nm世代で約1.0nm、28nm世代で約0.8nm、10nm/7nmで約0.6nm、3nm/2nm世代では0.5nm以下が要求されます。EOTを0.5nm以下まで低減するためには、界面層厚の最小化(0.3〜0.5nm以下)と高k値HfO₂の適切な成膜が両立が必要で、ALD(原子層堆積)の精度が直接EOT値を左右します。さらにゲートスタックのアニール後にHfO₂の結晶化が進みEOTが変化する現象(EOT rollback)の制御も重要です。
EOTの測定・評価にはC-V(容量-電圧)測定、エリプソメトリー、X線反射率(XRR)、TEM(透過型電子顕微鏡)断面観察が使われます。特にC-V測定はウェハレベルで非破壊的にEOTを定量評価できる実用的な手法です。ただしMOSキャパシタ構造が必要なため、実デバイスのゲートスタック評価にはTEM-EDXやXPS(X線光電子分光)による組成・膜厚解析が並行して行われます。
EOTの低減は半導体装置・材料市場に直結するドライバーです。EOT 0.5nm以下を実現するための界面層制御技術(プラズマ窒化・熱窒化・UV窒化)、高k値代替材料(La₂O₃添加HfO₂等)の開発が各デバイスメーカー・材料メーカーで進んでいます。ALD装置(ASM International・Applied Materials・Lam Research)と成膜前駆体(Merck・Entegris)が主要受益サプライヤーです。