防振・除振技術(Vibration Isolation Technology)とは、半導体製造装置を床振動・装置内部振動・音響振動から分離・遮断し、ナノメートル以下の精度が要求される製造・計測プロセスの安定性を確保するための技術です。EUV露光装置(ウェハステージの位置決め精度<1nm)・CD-SEM(電子ビームの安定性)・電子線描画装置・高分解能計測装置(アクティニック検査機等)では、床振動による性能劣化を防ぐために装置単位および建屋レベルでの防振対策が不可欠です。
防振技術の主要アプローチはパッシブ防振とアクティブ防振の2種類です。パッシブ防振はエアスプリング・粘弾性ゴム・金属スプリングなど機械的要素で振動を吸収します。低コストで信頼性が高い反面、低周波振動(1〜10Hz)の遮断が難しい特性があります。アクティブ防振はセンサーで振動を検知し、アクチュエータ(ボイスコイルモータ・圧電素子)で逆位相の力を即時印加して振動を打ち消します。EUV装置やCD-SEMでは両者を組み合わせたハイブリッド防振が標準採用されています。
EUV露光装置ASMLのTWINSCAN NEシリーズは世界最高水準の防振技術を搭載しています。ウェハステージとレチクルステージをそれぞれ独立したアクティブ除振台に搭載し、ステージ加速時の反力を相互キャンセルする「アクションリアクションシステム」により、露光中のウェハ位置決め精度(3σ)<0.3nmを実現しています。EXE:5000(High-NA EUV)ではさらに精度要求が高まり、防振システムの技術革新が装置性能向上の重要因子となっています。
建屋レベルの防振設計もファブ建設の重要技術です。先端ファブの建屋は免震構造(积层ゴム免震)・クリーンルームのスラブ(床板)に低振動コンクリートを使い、装置設置面の振動加速度をVC-E(振動クライテリア E:<3μm/s)以下に管理します。NHKスプリング・TMC(Technical Manufacturing Corporation、米国)・Herrenknecht(欧州)・日立造船(免震)が主要防振技術サプライヤーです。TSMC熊本・Samsung Taylor・Intel Arizona等の新ファブは防振仕様の高さが投資規模を左右する要素となっています。
防振技術市場は先端露光装置・計測装置の高精度化需要に牽引されます。ASML EUV装置1台に搭載される防振コンポーネントの価格は数億円規模とされており、EUV装置の増産は防振部品需要に直結します。NHKスプリングはASML向けの防振コンポーネントの主要サプライヤーとして、ASML売上拡大の恩恵を受けています。また半導体以外でも液晶パネル露光装置(Nikon・Canon)・量子コンピュータ・精密計測機器向けの防振需要も拡大しています。