SEMICONDUCTOR BASICS — 比較記事

ドライ真空ポンプとターボ分子ポンプの違い

半導体製造装置の排気系は、大気圧から超高真空まで10桁以上の圧力範囲をカバーしなければなりません。単一のポンプでこれを賄うことはできないため、粗引きを担うドライ真空ポンプと、高真空を作るターボ分子ポンプを直列に組み合わせるのが標準構成です。両者は競合する選択肢ではなく、排気系の中で異なる役割を担うパートナーです。

最終更新: 2026-08-12

結論:ドライ真空ポンプターボ分子ポンプ(TMP)の違いは?

両者は競合ではなく役割分担の関係です。ドライポンプは大気圧から数Pa程度までの粗引きを担う一次側ポンプ、ターボ分子ポンプ(TMP)はその先の10⁻¹〜10⁻⁸Paという高真空を作る二次側ポンプです。TMPは分子流領域でしか働かず排気側にも背圧の制約があるため、単体では使えず必ずドライポンプと直列に接続して運用します。

比較表

ドライ真空ポンプターボ分子ポンプ(TMP)
ドライ真空ポンプターボ分子ポンプ(TMP)観点別比較
観点ドライ真空ポンプターボ分子ポンプ(TMP)
担当する圧力域大気圧(10⁵Pa)〜数Pa(粗引き・低真空)10⁻¹〜10⁻⁸Pa(高真空〜超高真空)
排気の原理多段ルーツ/スクリューで気体を機械的に圧縮・排出高速回転翼が気体分子に運動量を与え排気方向へ弾く
単体運用可能(大気圧から引ける)不可(分子流領域が前提。バックポンプが必須)
回転数数千rpm級数万rpm級(磁気軸受で非接触支持)
堆積性ガスへの対応本体加熱+N₂パージで析出を防ぐ翼への付着がアンバランスを招く。パージ・コーティングで対策
苦手な気体特になし(機械的に押し出す)H₂・Heなど軽い分子(複合型で背圧耐性を補う)
主な用途全プロセス装置の一次排気・TMPのバックポンプエッチング・PVD・イオン注入・分析装置の高真空
主なメーカーEdwards・荏原製作所・樫山工業・Pfeiffer・ULVACPfeiffer・Edwards・荏原製作所・島津製作所・ULVAC

なぜ2種類を直列につなぐのか

TMPが働くのは、気体分子同士の衝突より壁との衝突が支配的になる「分子流領域」です。大気圧では分子の平均自由行程が短すぎて翼が分子を弾き飛ばせません。そのため、まずドライポンプで数Pa程度まで引いて分子流領域を作り、そこからTMPを立ち上げます。さらにTMPは排気側の圧力(背圧)が一定以下でなければ動作できないため、運転中もドライポンプが下流で引き続けます。

半導体プロセス特有の課題:堆積と腐食

CVDの未反応前駆体やエッチング生成物は、排気経路の温度が下がる場所で固体として析出します。ドライポンプでは本体をヒーターで加熱して析出温度域を避け、N₂パージで希釈・搬送することで固着を防ぎます。TMPでは翼への付着が回転バランスを崩す原因になるため、パージガスの導入と翼のコーティング、温度管理が対策となります。異物の噛み込みによる高速回転体の破損は装置に重大な損傷を与えるため、保護設計も重要です。

運用コストの見方:電力とアップタイム

ドライポンプはファブ内で常時稼働する台数が非常に多く、消費電力の合計が無視できない規模になります。インバータ制御による可変速運転で待機時の電力を下げる省エネ機種が主流です。一方TMPは、装置の真空立ち上げ時間(ポンプダウン時間)を通じてスループットに影響します。いずれもオーバーホールを含む保守サービスが供給側の大きな収益源であり、ファブ側から見れば計画的なPMがアップタイムを左右します。

関連ページ

ドライ真空ポンプ(用語)
ターボ分子ポンプ(用語)
クライオポンプ(用語)
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ゲートバルブ/スリットバルブ(用語)
除害装置(スクラバー)(用語)
真空ポンプカテゴリ
荏原製作所企業ページ(ドライポンプ・TMP・除害装置)
Edwards企業ページ(真空ポンプ・アベートメント)
Pfeiffer Vacuum企業ページ(ターボ分子ポンプ)

よくある質問

ターボ分子ポンプだけで真空にできないのはなぜですか?
TMPは気体分子が壁と衝突しながら独立に飛ぶ分子流領域でしか排気作用を発揮できないためです。大気圧では分子同士の衝突が支配的で翼が働きません。またTMPは排気側の背圧が高いと動作できないので、運転中も下流でドライポンプが引き続ける必要があります。
クライオポンプはどちらの代わりになりますか?
TMPと同じ高真空側の選択肢です。気体を外へ押し出さず内部の低温面に凝縮・吸着させる方式で、水蒸気の排気速度が大きく振動も少ないため、PVDやイオン注入装置で使われます。ただし定期的な再生(溜め込んだ気体の放出)が必要です。
ドライポンプはなぜ油を使わないのですか?
油回転ポンプでは油蒸気がチャンバー側へ逆流し、ウェハを汚染するリスクがあるためです。ドライポンプは排気室に潤滑油を使わない構造のため、この汚染経路を原理的に断つことができ、半導体製造装置の標準となりました。

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