ドライ真空ポンプは、真空を作る排気経路の一次側(粗引き)を担い、大気圧から数Pa程度までチャンバーを排気する装置部品です。「ドライ」とは排気室内に潤滑油を使わないという意味で、油回転ポンプ(ロータリーポンプ)で問題となる油蒸気の逆流によるウェハ汚染を原理的に排除できるため、半導体製造装置ではドライポンプが標準となっています。
主流の方式は多段ルーツ式とスクリュー式です。複数段のロータを非接触で回転させて気体を段階的に圧縮・排出する構造で、接触部が無いためパーティクル発生が少なく、連続運転に耐えます。プロセスの排気だけでなく、ターボ分子ポンプの背圧を維持するバックポンプとしても不可欠です。
半導体プロセス向けドライポンプの最大の課題は、堆積性・腐食性ガスへの耐性です。CVDの未反応前駆体やエッチング生成物がポンプ内部で固体として析出すると、ロータのロック(固着)や排気能力の低下を招きます。これを防ぐため、ポンプ本体をヒーターで加熱して析出を抑え、N₂パージガスを導入して生成物を希釈・搬送する運用が標準です。
運用面では、電力消費とアップタイムが重視されます。ドライポンプはファブ内で常時稼働する台数が非常に多く、ファブ全体の消費電力に占める割合が無視できません。近年はインバータ制御による可変速運転で、待機時の消費電力を大幅に下げる省エネ機種が主流になっています。排気は下流の除害装置(スクラバー)へ接続され、ポンプと排ガス処理は一体で設計されます。
主要メーカーは、Edwards(英)・荏原製作所・樫山工業・Pfeiffer Vacuum(独)・ULVACなどです。装置1台に複数のポンプが搭載されるため設置台数が膨大で、保守・オーバーホールを含めたサービス事業が大きな収益源となっている点も、この市場の特徴です。