ターボ分子ポンプ(TMP)は、高速回転する多段のタービン翼で気体分子を弾き飛ばし、高真空〜超高真空(10⁻¹〜10⁻⁸Pa)を得る真空ポンプです。ドライポンプが大気圧から中真空までを担うのに対し、TMPはその先の高真空領域を担当し、両者を直列に接続して使うのが半導体装置の標準構成です。
動作原理は、分子流領域において翼が分子に運動量を与え、排気方向へ偏った速度成分を持たせるというものです。翼の周速は音速に迫る毎分数万回転に達し、この高速回転を支えるために磁気軸受(マグネティックベアリング)が広く採用されています。非接触軸受は潤滑剤が不要で、パーティクルと振動の発生を抑えられます。
TMPは分子量の小さい気体(H₂・He)の排気が苦手という特性を持ちます。そのため、翼段の後段にホルベック段(ねじ溝ポンプ段)を組み合わせた複合型が一般的で、背圧耐性を高めてバックポンプの負担を減らします。ESCのHeバックサイドガスを扱う装置では、この特性が実際の排気設計に効いてきます。
半導体プロセスでは、堆積性ガスによる翼への付着とアンバランス、腐食性ガスによる部材の腐食が課題になります。パージガスの導入、翼のコーティング、温度管理により対策しますが、高速回転体であるため、異物噛み込みによる破損は装置に重大な損傷を与えます。安全のため、ローターの破裂トルクに耐える筐体設計と保護制御が組み込まれます。
主要メーカーはPfeiffer Vacuum・Edwards・荏原製作所・島津製作所・ULVACなど。エッチング・PVD・イオン注入・分析装置など高真空を要するあらゆる装置に搭載され、装置の真空立ち上げ時間(ポンプダウン時間)を通じてスループットに直接影響します。