フォノン(格子振動)とは

Phonon

最終更新:2026-10-03・製造プロセス|用語集のExcel・PDF版をダウンロード

フォノン(格子振動)とは?

フォノンとは、結晶の中で原子が集団で振動する格子振動を粒子のように扱ったものです。半導体では電子や正孔を散乱して室温の移動度を下げる主な要因となり、シリコンのような間接遷移型での光の吸収・発光にも必要です。熱もフォノンが運び、微細なデバイスの自己発熱や、ラマン分光による応力測定にも関わります。

定義・解説

フォノン(Phonon)とは、結晶の中で原子が集団で振動する格子振動を、量子力学的に粒子のように扱ったものです。音(phone)を語源とし、光の粒子である光子(フォトン)に対応する言葉として名付けられました。結晶の原子はばねでつながったように互いに結びついており、その振動はとびとびのエネルギーを持つ波として結晶の中を伝わります。隣り合う原子が同じ向きに動く音響フォノンと、逆向きに動く光学フォノンがあります。

フォノンは半導体の電気的な性質に大きく影響します。電子や正孔はフォノンとぶつかって進む向きを変えられる(散乱される)ため、室温のシリコンでは、このフォノン散乱が移動度を決める主な要因の一つで、温度が上がるとフォノンが増えて移動度が下がります。また、シリコンのような間接遷移型の半導体では、光を吸収して電子が移るときに運動量のつじつまを合わせるためフォノンの助けが必要で、これが光の吸収や発光が弱い理由になっています。熱もフォノンによって運ばれ、シリコンの熱伝導率(室温で約150W/m・K)を決めます。

デバイスと計測でもフォノンが登場します。微細なトランジスタやナノシートでは、表面や界面でのフォノンの散乱が熱を逃がしにくくし、自己発熱による特性の低下や信頼性の問題になります。高誘電率(High-k)のゲート絶縁膜では、膜の中の振動がチャネルの電子を散乱させる(リモートフォノン散乱)ため、移動度が下がる要因になります。計測では、光学フォノンによって光の波長がわずかにずれるラマン散乱を使い、シリコンのピーク(約520cm⁻¹)のずれから、結晶に加わる応力やひずみを非破壊で測ります。

よくある質問(FAQ)

フォノン散乱とは何ですか?▾
電子や正孔が結晶の格子振動(フォノン)とぶつかって、進む向きやエネルギーを変えられる現象です。温度が高いほどフォノンが増えて散乱が増えるため、室温付近のシリコンでは温度とともに移動度が下がります。不純物による散乱と並んで、移動度を決める主な要因です。
ラマン分光で応力がわかるのはなぜですか?▾
ラマン散乱では、光が結晶の光学フォノンとエネルギーをやり取りして、わずかに波長がずれた光が出てきます。結晶にひずみがかかると原子間の結合の強さが変わってフォノンの振動数がずれるため、シリコンの約520cm⁻¹のピークの位置の変化から応力を求められます。

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