光吸収(吸収係数)とは

Absorption Coefficient

最終更新:2026-10-03・製造プロセス・デバイス別|用語集のExcel・PDF版をダウンロード

光吸収(吸収係数)とは?

吸収係数とは、光が物質の中を進むときにどれだけ弱まりやすいかを表す値で、光の強さはI=I₀×exp(−αx)で指数関数的に減ります。逆数1/αは侵入長と呼ばれます。半導体ではバンドギャップより大きなエネルギーの光だけが強く吸収され、シリコンでは青色光が0.1μm程度、近赤外光は100μm以上入り込みます。

定義・解説

光吸収とは、物質に入った光のエネルギーが物質に受け渡されて光が弱まる現象で、その弱まりやすさを表す値を吸収係数(α:アルファ)と呼びます。光の強さは物質の中を進むにつれて指数関数的に減り、表面での強さをI₀、深さxでの強さをIとすると I=I₀×exp(−αx)で表されます。吸収係数の単位はcm⁻¹で、その逆数1/αは光の強さが表面の約37%(1/e)まで弱まる深さを表し、侵入長(吸収長)と呼ばれます。

半導体の光吸収は、主に価電子帯の電子が光のエネルギーを受け取って伝導帯へ移ることで起こります。そのため光子のエネルギーがバンドギャップより小さい(波長が長い)光はほとんど吸収されずに透過し、バンドギャップを超えると吸収が急に強くなります。シリコンのバンドギャップは約1.12eVで、波長約1.1μmより長い赤外光はシリコンを透過します。またシリコンは間接遷移型の半導体で、吸収に格子振動(フォノン)の助けが要るため、バンドギャップ付近では吸収係数が小さく、光が深くまで入ります。目安として、シリコンでは青色光(波長約400nm)の侵入長が0.1μm程度、赤色光(約650nm)が数μm、近赤外光(約1,000nm)では100μmを超えます。GaAsなどの直接遷移型の半導体は、吸収端を超えると吸収係数が急に大きくなります。

吸収係数はデバイスの設計と製造の両方で基本となる値です。イメージセンサーやフォトダイオードでは、受光部の深さを吸収する光の侵入長に合わせて設計し、近赤外の感度を上げるには厚いシリコン層や光路を長くする構造が必要です。太陽電池では、シリコンの吸収の弱さを補うために表面の凹凸で光を閉じ込めます。製造では、レーザーアニールの波長を表面だけを加熱したい深さに合わせて選び、シリコンが赤外光を通す性質は、ウェハの裏側からの位置合わせや内部の観察に利用されます。Semiraiの「シリコン吸収深さ計算」ツールで波長ごとの侵入長を確認できます。

よくある質問(FAQ)

吸収係数と侵入長の関係は何ですか?▾
侵入長は吸収係数の逆数(1/α)で、光の強さが表面の約37%(1/e)まで弱まる深さです。たとえば吸収係数が10⁴cm⁻¹なら侵入長は1μmです。吸収係数が大きいほど光は表面近くで吸収され、小さいほど深くまで届きます。
シリコンはなぜ赤外光を通すのですか?▾
シリコンのバンドギャップは約1.12eVで、これより小さいエネルギーの光、つまり波長約1.1μmより長い赤外光では、電子を伝導帯へ持ち上げられず吸収がほとんど起きないためです。この性質はウェハ越しの位置合わせや内部観察、赤外光学部品に利用されています。

設備の製造メーカー

浜松ホトニクス日本

光電子増倍管・フォトダイオード・イメージセンサーを手掛ける光半導体の世界的大手メーカー。半導体検査装置・医療機…

ソニーセミコンダクタソリューションズ(Sony)日本

CMOSイメージセンサーで世界シェア首位のデバイスメーカー。スマートフォン・車載・産業用カメラ向けに積層型・裏…

関連カテゴリ

関連用語

同じトピックの用語

半導体物理・結晶の基礎・ディスクリート・光半導体 のトピックで関連する用語です。

同じトピックの企業

信越化学工業日本日亜化学工業日本SUMCO日本ローム(ROHM)日本GlobalWafers(環球晶圓)台湾東芝日本

比較・違いを学ぶ

SiCとシリコン(Si)の違い
シリコンは半導体産業の標準材料で、ロジックやメモリはもちろん、パワー半導体でもIGBTやMOSFETとして大量に使われています。そこに近年、EVの普及とともに採…
→
SiCとGaN パワー半導体の違い
SiC(炭化ケイ素)とGaN(窒化ガリウム)はともにシリコンを超えるワイドバンドギャップ半導体ですが、得意な電圧域・周波数帯・用途が異なります。SiCは高耐圧・…
→
四探針法とホール効果測定の違い
どちらも半導体の電気特性を測る基本手法ですが、得られる情報の量が違います。四探針法は抵抗率という1つの値を素早く測れる一方、その値の内訳までは教えてくれません。…
→
CMOSイメージセンサーとCCDの違い
デジタルカメラの普及を支えたのはCCDイメージセンサーでしたが、現在のスマートフォンや車載カメラに入っているのはほぼすべてCMOSイメージセンサー(CIS)です…
→
イオン注入と熱拡散の違い(不純物導入プロセスの比較)
イオン注入(Ion Implantation)は不純物(ドーパント)をイオン化・加速して基板に物理的に打ち込む方法で、ドーズ量と加速エネルギーにより濃度と接合深…
→
GaN-on-SiとGaN-on-SiCの違い
GaNは自立基板が高価で入手性も限られるため、実用デバイスの多くは異種基板の上にGaN層をヘテロエピタキシャル成長させて作られます。その基板として競合するのがシ…
→
← 用語集に戻る用語集をExcel・PDFで使う →