光吸収とは、物質に入った光のエネルギーが物質に受け渡されて光が弱まる現象で、その弱まりやすさを表す値を吸収係数(α:アルファ)と呼びます。光の強さは物質の中を進むにつれて指数関数的に減り、表面での強さをI₀、深さxでの強さをIとすると I=I₀×exp(−αx)で表されます。吸収係数の単位はcm⁻¹で、その逆数1/αは光の強さが表面の約37%(1/e)まで弱まる深さを表し、侵入長(吸収長)と呼ばれます。
半導体の光吸収は、主に価電子帯の電子が光のエネルギーを受け取って伝導帯へ移ることで起こります。そのため光子のエネルギーがバンドギャップより小さい(波長が長い)光はほとんど吸収されずに透過し、バンドギャップを超えると吸収が急に強くなります。シリコンのバンドギャップは約1.12eVで、波長約1.1μmより長い赤外光はシリコンを透過します。またシリコンは間接遷移型の半導体で、吸収に格子振動(フォノン)の助けが要るため、バンドギャップ付近では吸収係数が小さく、光が深くまで入ります。目安として、シリコンでは青色光(波長約400nm)の侵入長が0.1μm程度、赤色光(約650nm)が数μm、近赤外光(約1,000nm)では100μmを超えます。GaAsなどの直接遷移型の半導体は、吸収端を超えると吸収係数が急に大きくなります。
吸収係数はデバイスの設計と製造の両方で基本となる値です。イメージセンサーやフォトダイオードでは、受光部の深さを吸収する光の侵入長に合わせて設計し、近赤外の感度を上げるには厚いシリコン層や光路を長くする構造が必要です。太陽電池では、シリコンの吸収の弱さを補うために表面の凹凸で光を閉じ込めます。製造では、レーザーアニールの波長を表面だけを加熱したい深さに合わせて選び、シリコンが赤外光を通す性質は、ウェハの裏側からの位置合わせや内部の観察に利用されます。Semiraiの「シリコン吸収深さ計算」ツールで波長ごとの侵入長を確認できます。