深い準位(Deep Level)とは、半導体のバンドギャップの中で、伝導帯の底や価電子帯の頂上から大きく離れた、ギャップの中央寄りの位置にできるエネルギー準位のことです。ホウ素やリンなどのドーパントが作る準位は、バンドの端からわずか数十meVの位置にあり、浅い準位と呼ばれます。浅い準位は室温でほぼすべて電子や正孔を放出してキャリアを供給しますが、深い準位はキャリアを供給するより、捕まえたり再結合させたりする働きをします。
深い準位の主な原因は、鉄・金・銅・ニッケルなどの金属の不純物と、空孔や格子間原子、その複合体などの結晶欠陥です。ギャップの中央付近の準位は、伝導帯の電子と価電子帯の正孔の両方と行き来しやすいため、電子と正孔の再結合や、熱による電子と正孔の対の発生の中継点(SRH再結合・生成中心)として強く働きます。その結果、キャリアの寿命が短くなり、PN接合のリーク電流やイメージセンサーの暗電流が増えます。製造工程で金属の汚染を厳しく管理し、ゲッタリングで金属を素子の領域から遠ざけるのはこのためです。
深い準位を測る代表的な方法がDLTS(Deep Level Transient Spectroscopy:深い準位過渡分光法)です。ショットキー接合やPN接合に電圧のパルスを加えて準位にキャリアを捕まえさせ、それが熱で放出されるときの容量の変化を、温度を変えながら測ることで、準位のエネルギーの深さ・密度・キャリアを捕まえやすさを求めます。深い準位は常に有害というわけではなく、高速のダイオードやIGBTでは、金や白金を入れたり電子線を照射したりして意図的に深い準位を作り、キャリアの寿命を短くしてスイッチングを速くします(ライフタイム制御)。