デバイ長(Debye Length)とは、電荷を持つ粒子が多数ある中に別の電荷を置いたとき、周りの粒子が集まってその電荷の影響を打ち消す(遮蔽する)距離の目安です。オランダの物理学者デバイにちなむ名前で、デバイ遮蔽長とも呼ばれます。この距離より遠くでは電荷の影響がほとんど届かず、物質は全体として電気的に中性に見えます。プラズマ、半導体、電解液など、動ける電荷が多い物質で共通に使われる考え方です。
デバイ長は、温度が高いほど長く、動ける電荷の密度が高いほど短くなり、λD=√(εkT/q²n)で表されます(εは誘電率、kはボルツマン定数、Tは温度、qは電荷、nは密度)。プラズマでは電子の温度と密度で決まり、半導体製造に使うプラズマ(電子温度数eV、電子密度10¹⁰cm⁻³程度)ではおよそ0.1mm前後になります。プラズマと壁の間にできる、電子が少なくイオンが加速される層(シース)の厚さは、デバイ長の数倍から数十倍程度になり、イオンがウェハに当たる向きとエネルギーを決めます。気体の電離した状態が「プラズマ」として振る舞うには、その広がりがデバイ長より十分大きいことが条件の1つです。
半導体の中では、ドーパントから生じたキャリアが電荷を遮蔽し、その距離を外因性デバイ長と呼びます。たとえばシリコンでドーパント濃度が10¹⁶cm⁻³なら約40nmで、濃度が高いほど短くなります。デバイ長は、表面や接合の近くでバンドが曲がる範囲の目安となり、MOS構造の容量の計算や、空乏層の端でキャリアの濃度がどれだけなだらかに変わるかを考えるときに使われます。SemiraiのプラズマパラメータツールでプラズマのDebye長を試算できます。