フィックの法則(拡散係数)とは

Fick's Laws of Diffusion

最終更新:2026-10-03・熱処理装置・製造プロセス|用語集のExcel・PDF版をダウンロード

フィックの法則(拡散係数)とは?

フィックの法則とは、物質が濃度の高いところから低いところへ広がる拡散を表す基本法則です。第1法則は拡散の流れが濃度勾配に比例すること(J=−D×dC/dx)、第2法則は濃度の時間変化を表します。比例定数の拡散係数は温度に強く依存し、半導体ではドーパントの広がりを計算してサーマルバジェットを管理する基礎になります。

定義・解説

フィックの法則(Fick's Laws)とは、物質が濃度の高いところから低いところへ広がる拡散の速さを表す基本法則で、1855年にドイツのアドルフ・フィックが示しました。第1法則は、単位時間・単位面積あたりに流れる物質の量(拡散流束J)が、濃度の勾配に比例することを表し、J=−D×(dC/dx)と書けます。比例定数Dが拡散係数で、物質がどれだけ速く広がるかを表します。第2法則は、濃度が時間とともにどう変わるかを表す式で、∂C/∂t=D×(∂²C/∂x²)となります。

半導体では、フィックの法則はドーパント(不純物)の拡散を扱う基礎です。熱処理の間にホウ素やリン、ヒ素がシリコンの中でどこまで広がるかは、第2法則を条件に合わせて解くことで求められます。表面の濃度を一定に保って拡散させる場合(気相からの拡散)は相補誤差関数(erfc)型、一定量のドーパントを最初に入れて広げる場合(イオン注入後の熱処理)はガウス分布型の濃度分布になります。広がる距離の目安は拡散長√(Dt)で、拡散係数と時間の平方根に比例します。

拡散係数は温度に強く依存し、D=D₀×exp(−Ea/kT)というアレニウスの式に従います。シリコン中の代表的なドーパントでは、温度が100℃上がると拡散係数が1桁前後大きくなるため、熱処理の温度と時間の積み重ね(サーマルバジェット)を管理することが、浅い接合を作るうえで重要です。微細なトランジスタでは、短時間で高温にするスパイクアニールやフラッシュランプアニールで、ドーパントを活性化しながら拡散を最小限に抑えます。実際のドーパントの拡散は、点欠陥や電界、濃度によって速くなるなど、単純なフィックの法則からずれることもあり、シミュレーションで補正されます。

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よくある質問(FAQ)

フィックの第1法則と第2法則の違いは何ですか?▾
第1法則は、ある瞬間に流れる物質の量(拡散流束)が濃度の勾配に比例することを表します。第2法則は、第1法則と物質の量の保存から導かれ、各場所の濃度が時間とともにどう変わるかを表す式です。ドーパントの濃度分布の計算には第2法則を使います。
拡散長とは何ですか?▾
拡散によって物質が広がる距離の目安で、拡散係数Dと時間tから√(Dt)で求めます。時間を4倍にしても広がる距離は2倍にしかならず、拡散係数は温度で大きく変わるため、熱処理の温度が拡散の広がりを強く左右します。

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