結晶粒界(Grain Boundary:粒界)とは、多結晶の材料の中で、結晶の向き(方位)が異なる小さな結晶(結晶粒)どうしが接している境目のことです。1つの結晶粒の中では原子が規則正しく並んでいますが、粒界では隣の粒と原子の並びが合わないため、原子の配列が乱れ、結合の手が余ったり、すき間が多くなったりします。半導体では、単結晶のシリコン基板には粒界がありませんが、ゲート電極や配線に使う多結晶シリコン(ポリシリコン)や金属の膜は、多数の結晶粒と粒界を含んでいます。
粒界は電気的な性質に大きく影響します。多結晶シリコンでは、粒界の乱れた原子がキャリアを捕まえる準位を作り、粒界に電荷が溜まって電位の壁ができるため、同じドーパント濃度の単結晶より抵抗が高くなり、移動度も下がります。また、ドーパントは粒界に集まりやすく、粒界に沿って速く拡散します。高性能なトランジスタに単結晶シリコンが不可欠なのは、粒界によるキャリアの散乱や再結合がないためです。
金属配線では、粒界は抵抗と信頼性の両方に関わります。銅配線の幅が数十nm以下になると、結晶粒が小さくなって粒界の割合が増え、電子が粒界で散乱されるため、配線の抵抗率が材料本来の値より大きく上がります。さらに、電流によって金属原子が移動するエレクトロマイグレーションでは、粒界が原子の速い通り道になります。粒界が配線を横切るように並んだ竹の節のような構造(バンブー構造)にすると、原子が粒界に沿って長く移動できなくなり、寿命が延びます。熱処理で結晶粒を大きく成長させることも、抵抗と信頼性の改善に使われます。